2020冬四国・二日目 (松山・宇和島)

一日目はこちら

 

道後温泉・朝

 5時半起床。身支度をして外湯へ。さて今日も洗面セットをお借りして、と玄関に向かった所で昨晩本館へ忘れたことに気づく。この日は別の所に行く予定だったが、仕方ないので先に本館へ。雨気味の空であったので、傘を借りて出撃。

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 冬の早朝故にまだ日の出前。夜よりも明かりが落とされた本館は、より怪しげな雰囲気を放っている。しかしその実、朝6時から営業を開始する健全かつ有難い施設である。開店待ちの列はあるが昨晩よりは少ない。開店後、受付のおばちゃんに声を掛けて忘れ物回収、そして退散、という作戦を立て突入。しかしうっかり浴場に入ってしまう。

 昨日となんら変わりのない湯ではあるが、朝の寝ぼけ頭には熱い湯が有難い。シャッキリした辺りで早めに退出、商店街を通って椿の湯に向かう。

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 道後温泉には3つの外湯がある。本館、飛鳥乃湯、そしてここ椿湯である。歴史ある本館、やや豪華な飛鳥乃湯、デカくて日常使いに便利な椿湯、と使い分けられているようだ。他二つは6時開店だがここは6時半からで、図らずも丁度いい暇つぶしが本館で出来た形となった。

 外装・内装共に立派な施設で、下駄箱ゾーンなどちょっとした中学校並みの広さがある。それでいてお手頃価格*1。券売機で入浴券を購入、浴室へ向かう。道中には道後温泉の歴史が書かれたパネルもあった。坊ちゃんでの登場が鉄道開通並みの出来事として並べられていた。

 外装に違わず浴室も相当な広さで、楕円形の浴槽が中央に鎮座、それを囲むようにカランが配置されている。ここの給湯口も本館と同じく石造りの柱であった。入口右横にはサウナっぽいスペースもあったが、入っていないので中が何かは分からない。紋々の入った方とご一緒することもあり、地元の方々に親しまれていることがよく分かった。泉質は概ね本館と同じ。塩っぽい感覚があるような気がしないでもないが、強烈な塩素感に阻まれる。行政の方針なのでこればかりは仕方ない。

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他には夏目漱石のものもあった。文章は特に松山と関係なかった。

 30分ほど入浴して退館。休憩スペースで牛乳を飲む。外には庭のようなスペースがあり、手水に石碑と色々な物が置いてある。何故かラブレター文章の展示もあった。アート企画的な事をやっていたらしい。

 商店街を抜け坂を登り、しばらく歩いたところでまたもや入浴セットを忘れたことに気がつく。急いで取り帰り、宿で返却してチェックアウト。そのまま散歩へ向かう。

 道後温泉駅~本館の間は商店やホテルが立ち並んでいたが、少し東側にずれると住宅街然とした町並みになる。その中に時々古刹古社が混ざっているのは流石の土地。それほど観光地化することは無く町並みに溶け込んでいる。

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 名社寺が並ぶ中でも特に古いのが伊佐爾波神社。絢爛な八幡づくりの社殿が雨に濡れて映えていた。神社らしく、少し小高い丘の上にあり、参拝にはやや難儀する。その分眺めは良い。

 松山を発つ電車まではまだ時間がある。折角なのでぶらつきながら向かうこととした。まずは温泉につきものの湯神社へ。丘を降りてから別の丘へ再び登り参拝。

 

松山の城

 次はそのまま南側へ向かい、道後公園へ。残念ながら式記念博物館はまだ開いていなかった。

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道後温泉街はアーケードの中

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中央の丘が松山城

 湯築城跡とのことで、ここも小高い丘の上にある。眺めに優れており、温泉街が一望できる。丘陵にへばりつくようにして建つホテル群がよく見える。松山城もバッチリ。

 ここまでの昇降で膝にも来ていたが、腹にも突然の下痢が来襲し心底慌てる。幸いにも公園内にはトイレがあり、最悪の事態は避けられた。感謝。

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みかん色

 丘から降りた後は市電に乗って松山城へ。バス並みの頻度で来てくれるため、さほど待たずに乗れた。

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東雲神社、松平家を祀っている

 城下の神社に参拝した後、長い坂を登る。平山城の本領発揮か、緩やかながらもかなりガッツリ登らされる構造で体力に来る。隣を通るリフトが羨ましくなる時もあったが気合で登る。気分は城攻め。

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羨ましい

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道の脇に謎の建物

 しばらくは近代的な道が続くが、10分ほど登ると石垣が見えてくる。しかしそこから入れるわけではない。上からの攻撃に怯えつつ、石垣に沿っていくと大手門跡に到達。

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左奥が天守

 奥には天守が見え、気分も高揚する。しかしこの天守方向へ続く道、実は行き止まりらしい。侵入者を惑わす巧妙な縄張りである。現在は行き止まりルートが封鎖されているので、迷うことなく折り返せる。

 折り返して坂を登り、初めに目に入るのは戸無門。文字通り門構えのみで戸が無い。再建で消えたのかな?と思いきや、敵を誘い込むためにこうしたと考えられているとか。

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 誘い込まれた先には当然ながら門が。筒井門と呼ばれるこの門、一見普通の門と櫓の構えに見えるが...

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 なんと奥にもう一つ門がある。こちらは隠門と呼ばれ、筒井門に攻めかかる敵の虚を突く為に配置されているとか。実際、自分も看板を読んで初めて気づいた。

 

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狭間だらけの太鼓門

 ここを突破すれば天守、とはならずやはり道を曲がらされる。正面の石垣の両端には櫓が配置されており、侵入者をすり潰す気に満ちた構成である。右端の太鼓門を抜けるとようやく本丸に入れる。

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 本丸から天守までは平らに開けており、天守の様子がよく見える。売店も並ぶ絶好の休憩ポイント。緩やかに進み、天守の麓へ。天守からは見学が有料となるのでチケット売り場で購入後、突入。

 

 天守まで来たら後は飾りだから安心、とはならないのが松山城である。簡単には大天守に到達させない連立天守の構造で、やぐらに睨まれながらくねくねと曲がる道を進まされる。

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やる気満々

 小天守から侵入すると、中は資料館になっている。急な階段と低い天井が現存天守らしい。築城に関する資料の他、縄張りの意図や甲冑装着体験コーナーなど実戦的なものもあって良かった。

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実戦的
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装備も万全

 城紹介ムービーが攻城兵に対するインタビュー形式という変わった造りになっていて、演者はおそらく素人の職員さんながら迫真の演技で面白かった。人物としては築城に関わった加藤嘉明が押されている一方で、実際の藩主として長い事つとめた松平氏にはほぼノータッチだった。

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 天守からは松山市街が一望できる。他に高い建物は少なく、瀬戸内海とそこを走る船まで見えてしまうほど見晴らしがいい。

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算木積みが目立つ

 堪能してから下城。南側に降りる道は裏口扱いらしく、木に囲まれた土の道だった。石垣が長く続いていたのが印象的。時間が中途半端に余っており、伊予鉄でグルグル回って駅メモを回収するつもりだったが、乗る系統を間違えまくって頓挫。県庁を見つつ駅へ戻った。

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みかん県 県庁舎

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じゃこ天うどん

 お土産を購入後、うどんを食べていざ出発。

 来た列車はまたしてもアンパンマン列車だった。JR四国を支配する土佐の雄に敬意を表しつつ乗車、宇和島方面へ向かう。

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四国要素は特になし

 内子経由だったので瀬戸内海は見られず、山の中を進む。しばらくして海沿いに出たかと思うとトンネルに入りの繰り返しでつらつらと向かっていく。海岸沿いの地形は急峻で、そこかしこに段々畑があるのは南予らしい風景。おそらく柑橘類だろう。愛媛だし。

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伊予吉田駅の五周年看板 何の五周年だったのかはいまだに謎

宇和島巡り

 90分ほどで宇和島に到着。駅を降りるとヤシの木が並び立つ南国風景が目に入る。しかし松もあり、よく分からない。

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 国道に近い好立地の駅ではあるが、駅前は閑散としている。ホテルがポツンポツンと立つくらいで一本入ると住宅街。どうやら中心部はやや西の高速高架下の通りにあるらしい。取り敢えずは昼食、静かな住宅街を抜けて川沿いの道へ。大衆割烹の店、ほづみ亭へ向かう。

 宇和島といえば鯛めし。当然鯛めしを食べることは心に決めていたが、並び立つように書かれたさつま飯も気になる。お誂え向きにセットのメニューがあったのでそれを注文。

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 付け合わせの刺身も含めて中々豪勢な布陣で来た。鯛めしは刺身を乗っける宇和島式、当然のようにうまい。熱々のご飯に卵と醤油に浸かった新鮮な鯛刺身を乗っける所業、どう考えても美味しい。実食すると期待を越えてくる美味しさだった。タイがプリップリで、淡白な印象を覆すほどにうま味も濃くてたまらない。ノリもバッチリ合う。

 予想外だったのはさつま飯。写真右上の褐色汁がそれである。魚のほぐし身と味噌を混ぜたものとのこと。見た目は得体が知れないし、いい匂いはするが何故か冷たい。恐る恐る口に運ぶと、これが実に美味しかった。魚のうま味をギュッと凝縮したような味で、練り物の魚成分を何十倍も濃くしたような風味がある。どろりとした舌触りで、口に含むと魚の風味がまんべんなく広がり幸福感に包まれる。特筆すべきは米との相性だろう。ぬるい温度と味噌ベースの味、異常に濃い魚味が合わさって熱い米に物凄く合う。鯛と合わせて飯が異常なペースで進み、付け合わせを半分も消費しないうちにおひつは空になってしまった。

 店内のメニューを見ると太刀魚の踊り食いだのふかだの盛りだくさんで気になる所。また来たい。

 

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 店名の由来は店のすぐ横にある穂積橋とのこと。この橋は明治の法学者、穂積陳重を名の由来としている。活躍を賞して故郷に銅像を建てる提案があったものの、それを固辞して橋に名を残したカッコいい人。11/21の大河ドラマ「青天を衝け」に栄一の長女の婿として登場しており、調べたら以上の関わりが出てきて驚いた。

 宇和島藩は小藩ながら教育を奨励して富国に向かった開けた藩で、特に幕末の藩主伊達宗城は四賢候にも数えられるほどの才人だった。政界にも影響を及ぼしていた為か、幕末~明治にかけて数々の偉人を輩出している。大河ドラマでも宗城が結婚の仲人として描かれていた。

 

 食後は藩政の中心地、宇和島城へ向かう。

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宇和島のシンボル、牛鬼の頭が掲げられている

 途中には商店街があった。綺麗な上にアーケード付きだが、空き店舗が多く寂れた印象を受ける。街道をゆくに載っていた劇場なども無くなっているようで寂しい。

 

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 ほどなくして城の長屋門へ。坂を登って天守へ向かう。

 道は木に覆われ、登山道めいて鬱蒼としているが、所々に石垣や井戸などの遺構が現れる。かなりきつい登りだった。10分ほどで天守に到着。

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 天守広場には他に建物が無く、ただ天守のみがポツンと建っている。ここも現存天守で内部は古めかしい造り。資料館にもなっている。雑多に物が置かれている上、天井付近には全国現存12天守の写真がぐるっと掲示されていて中々騒がしかった印象。所々で築城主の藤堂高虎や藩主の伊達家を讃える展示がある。

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よく分からんがカッコいい絵

 階上は眺めのいい展望台になっている。宇和島の複雑な地形が一望できる建物は貴重。

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 海に近い為、入り江を形成している湾の様子がよく見える。山側に目を向けるとちらほら段々畑らしきゾーンが目に入り、愛媛を感じさせる。

 天守を降りて北側に少し下ると郷土資料館がある。いくらかパネル展示があったので見学。先ほどの穂積氏をはじめ、錚々たる面子が並んでいた。

 少し戻って今度は西側に下り、昇り立ち門から退出。ここには大津事件で有名な児島惟謙の像もある。

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児島惟謙の方はバッチリ銅像になっている

 この時点でまだ1時間ほどの余裕があった。博物館を見るには厳しいが駅に戻るにも手持ち無沙汰、ということで港へ向かう。

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港らしい板壁ハウス

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 宇和島港は多用途に使われる港で、漁船からクレーンまで多様な設備が並んでいる。中にはフェリー港もあり、近海の島々に向けて定期航路が就航しているようだ。

 その辺を散歩しつつ北上すると、謎の悪臭が鼻を突いた。魚っぽいようでそれとも違うよく分からない臭いだったが、歩いている内に退散。そのままうろついて道の駅へ向かう。

 道の駅にはスーパーが併設されていて、海産物、日用品と加工食品、青果とエリアが分かれている。

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ちょっと出てる

 はじめに海産物ゾーンを見回った。どれもかれもが興味深い。港直結ということで流石の鮮度、活きの良いまま売られているものも多い。よく知らん名前の魚があちこちにいて面白かった。ハゲやホゴとは一体何者だったのだろう。切り身は流石に買えないので、丸寿司というおからを魚でまいた郷土料理を購入。食事コーナーまであるので次は使ってみたい。

 日用品ゾーンは飾らない地元向け用品といった配置である。コストコディナーロールが売られていた。デカい蒸しパンが安く売られていたので購入。次の青果ゾーンに入った途端、中央にどでかく積まれた柑橘の山に度肝を抜かれる。

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 なにせ種類が多い。ポンカン、八朔、いよかん、せとか...数えきれないほどの柑橘が並んでいる。大小も様々で、壁際に並んだ文旦などは笑ってしまうくらいデカかった。この時は2月、柑橘カレンダーを見る限り旬ど真ん中の時期らしい。それぞれには簡素な包装と生産者の氏名住所が書かれていて、いずれも宇和島市内の産物である。しかもメチャクチャ安い。ポンカン8個で200円と見た時は目を疑った。普通のみかんよりデカいくらいのサイズが入ってこの値段である。つい購入。リュックの中で相当にかさばることは痛手だったが、このあと数日は甘味を供給し続けてくれた。売り場の片隅には配送コーナーもあり、ここで一箱買って送らなかったことは今でも後悔している。誰か冬に行ったらご連絡ください。

  鞄を重くして大満足。駅に向かって歩いていく。和霊神社にも寄りたかったが、時間を使い過ぎたので断念。にも関わらずうっかり駅前のスーパーに寄ってしまい、ボラメという小魚の揚げ物を購入することに。列車の時間ギリギリになり、荷物を抱えてダッシュ。何とか間に合わせた。

 

四万十から土佐へ

 ここからは予土線で高知方面へ向かう。来た列車は何と新幹線!

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 ではなく、新幹線の塗装をした特急である。総勢一両。車内には鉄道模型も展示されており、ほんのり遊び心があった。しかし何故か新幹線の模型は無かった。

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沈下橋

 列車は清流・四万十川に沿って走る。小高い線路の上からでも底が分かるような透明度で、渓流沿いの景色は見ていて飽きない。有名な沈下橋もちらほら見られた。高校生が乗ったり下りたりする様子を横目に見つつ南下。

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珍名という一点で有名

 夕暮れの頃に窪川駅に到着。20分ほど乗換に余裕があったので待合室で休憩。新しくてきれいな駅舎だった。

 ここからは高知の南端を目指す。まずは中村方面、土佐くろしお鉄道へ。海岸沿いを走る列車なので日中はさぞ綺麗な車窓が拝めるのだろうが、この時は真っ暗だった。

 40分ほど走って中村駅に到着。バスまで15分の空きがあったのでコンビニに走り、翌朝のお茶を準備する。待合室で少し待つとバスが来訪。

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 ここからはさらに南、足摺岬を目指した。乗っているのは自分含めて四人のみ。乗る人もおらず、終点まで暗い中を進んでいった。車窓からは何も見えないが、街灯の有無でおそらくそこが海であろうということは推測出来た。

 やや古いバスであり、正面の停留所表示パネルのようなものは無かった。その代わりなのか、運転席後ろにある「急停車注意」の他に「右折・左折・次止まります」の表示も設置されていた。翌朝のバスのことか記憶が判然としないが、「次止まります」と「乗車記録がありません」をバグったように連呼している時間があってビビったことを覚えている。運転手は気にしていないようだった。

 学会共著のメール作業をしつつ進むと2時間ほどで宿泊地に到着。宿の御主人が玄関先で待っていてくれたのでスムーズにチェックイン。山側で予約した部屋も、人数の少なさから海側に変えてくださった。部屋に荷物を置き、温泉へ。

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例のアレも完備

 浴場は二カ所あり、屋内の大浴場と屋上露天風呂で構成されていた。いずれも温泉利用とのことだが、大浴場の方は塩素がきつく、温泉要素がよく分からなかった。放射能泉は感覚的に分かりづらいので致し方ない部分もある。

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 屋上露天風呂は中々いい環境だった。辺りには街灯もほとんどない上、じっとしていると明かりが消え、眼前に満天の星空が広がる。目の前が海という開放的な環境も手伝い、大変に爽快な湯浴みであった。他に人も来ず、ひたすら浸かったり出たりを繰り返しつつ海や空を眺めていた。歌も歌っていたような気がする。

 

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 入浴後は部屋で晩酌。宇和島で買った品々を肴に飲む。蒸しパンはノーマル蒸しパン。丸寿司はおからを魚で巻いたものそのままの味わい。ボラメの唐揚げは意外と量が多く、ガッツリ腹に溜まってくれた。夕食を抜いていたのでカップ麺も買って備えていたのだが、食べる前に満足してしまい、これもまたリュックを圧迫することとなる。

 正直な所、目当ての宿が埋まっていて代打で予約した宿ではあったが、ここも中々快適だった。翌朝の作戦を立てつつ就寝。

 

三日目に続く。

*1:大人420円、その他割引が多種多様

2020冬四国・一日目(香川)

 この年の冬、JR四国から「冬の四国満喫きっぷ」たる大変お得な切符が出ていた。4日間13000円で特急乗り放題と好条件。行かねばなるまい。

 

夜行

 四国までは自前で行かねばならない。今回はサンライズ瀬戸を選択。19時頃までバイトの後、帰宅風呂飯を済ませて東京駅へ向かう。

 

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 サンライズは出雲を一度、姫路下車を一度利用しており、今回は三度目である。ノビノビ座席に空きがあったため確保。先の二回では埋まっていた席であり、今回が初の利用になる。

 買った席は下側。座席はかなり硬めで、フェリーの雑魚寝席に近い感触だった。つい立てのお陰で個人空間は意外と確保されている。しかしやはり狭く、リュックでも置き場には困ったので、スーツケースだと更に厳しいかもしれない。

 乗り込んで姿勢と身支度を整える内に発車。途中品川・横浜と停まるホームを下から眺めつつ酒を飲む。熱海に着いた辺りで寝ようかと考えていたが、興奮と座面の硬さでほぼ眠れず。上着を敷いたり鞄を枕にしたりと試行錯誤の末、諦めて車窓を見る。

 三島を越えた辺りから、市街地が車窓の多くを占める。山間地に比べて街灯のある分町の様子は見えやすい。たまに24時間店舗の光が見える国道沿い、動くものが無いかと思いきやたまに人/車が通る住宅街、微妙に明かりがついている駅など面白い。

 駅メモをポチりつつ、京都だ大阪だと興奮している内に夜明けが近づく。岡山に着くころにはやや空が白み始めていた。そのまま南下し、瀬戸大橋を通る頃になって日の出が来る。 

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 座席の窓は東側。目には悪いが、存分に夜明けを見られて有り難い。橋の上では瀬戸内の島々が点々と現れ、その間から太陽が見え隠れしている。四国側には造船所が堂々と並び立ち、煙を噴き上げていた。上陸する頃には下車寸前、慌てて荷物をまとめる。列車は高松まで向かうが、自分は坂出で下車。

 

うどんとこんぴら

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 改札外へ出た後、フリーきっぷで再入場。予讃線のホームへ向かって乗り換えを待つ。時刻は7時、通学の時間とあってか学生が多い。車窓には綺麗な三角形の山々が見えていた。郊外めいた街を南下し、善通寺を過ぎると琴平駅に到着。

 

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国鉄琴平驛

 レトロな駅舎の反対側には狛犬が鎮座していた。金毘羅宮まで2km弱、徒歩で20分ほどの参道を歩く。

 駅正面の道をまっすぐ進むと大きな灯籠が見えてきた。そばの公園内には更にドデかい灯籠がある。解説板によると奉納品らしい。この手の奉納品はこの後も大勢現れており、門前町らしさを否応にも感じさせられる。

 

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 公園の向こうにはことでん琴平駅がある。ここでロッカーに荷物を預け、身軽になって再出発。駅北側の川を越えて進む。南へ向かう通り沿いにはホテル・土産屋・うどん屋などひしめき合っていた。密度の高い街ながら、大きな駐車場をよく見かけた所も印象深い。ホテルには日帰り温泉の表示もあり、少し気になるが振り切って進む。

 

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 ややあって表参道へ到達。観光地らしい店が立ち並ぶが、朝8時とあってはどこも閉店中。と思いきや、一軒のうどん屋が開いていた。これ幸いと朝食に突入。

 

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うどん①

 一食目はこんぴらうどん参道店のしょうゆ玉うどん。コシの強さは流石。580円とこの日に食べた中では高額な方だが、相応のボリュームがある。醤油が妙に美味かった。

 店内は広々としていた。木材を荒々しいまま使ったテーブルが印象深く、後で調べると築数百年の建物だとか。とはいえ朝八時、いたのは自分一人。団体客が入るキャパはあるし、本番は昼なのだろう。

 

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要所要所に段数表示がある

 食後は参道へ向かう。一度登り始めてからはひたすら階段、階段、息つく間もなく階段の連続である。急坂が続く中でも両脇の土産屋は途切れなかった。しかし全部シャッターが下りている。

 

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 登りきると大門。ここで一旦平坦に。門をくぐった先には四人のおばちゃんが居て、朝早くからそれぞれ飴を売っていた。先には石畳が続き、両脇には奉納碑が連なる。

 

 鳥居に差し掛かるとまた階段。いくつかの摂末社を経た後、本宮に到達。ここまで785段らしい。

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 時刻は9時前、ふもとの様子に反して朝早くから人が多い。裏参道があるとのことで、地元の方々だろうか。並んで参拝。

 

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数々の写真の他、黄金のスクリュー像もある

 本宮は複数の建物が繋がった構造。近くの建物には船舶関連の品々がわんさか奉納されていた。流石は船に定評のある金比羅宮。公式サイトも凝っているので一見の価値あり。

 

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ここでも童話のような山々が目立つ

 背後を見ると展望台があり、讃岐平野を望める。ここから海も望めるらしい。

  参拝はここで終わらない。背後の琴平山を上がると奥社が存在し、本殿裏から階段が続いている。休憩の後に登っていく。登りはかなりハードで、沿道の風景は登山そのものである。

 

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物資運搬用の索道まである

 

 途中いくつかの摂社を過ぎつつ登っていくと、行き止まりに立派な社が見えた。ここが奥社らしい。

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 近くには社務所らしき建物もあったが、この日は閉まっていた。人もまばらで、周辺環境だけ見れば山奥の静かな神社といった趣だが、拝殿は相当に派手である。

 

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天狗の修行場

 別ルートから更に山頂へと登ることも出来るらしいが、体力と相談して退却。再び本殿へ戻り、市街へと降りていく。参道脇に宝物館があったのでついでに拝観。かつての本尊たる仏像や、百人一首特集が展示品では印象深いが、何より洋館めいた建物がかっこよかった。

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段数が住所代わり

 飴売り四天王を抜けてガシガシ降りると門前街で、時間が下ったこともあって混雑していた。途中で酒蔵に寄って補充。うどん学校の看板が気になる所だが、時計を見て泣く泣く断念した。しかし胃はダメージを受けたので、駅前近くにあるカレーうどん店へ向けて前進。

 

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 参道を外れていくとごく普通の地方都市であった。途中通った商店街は、先ほどの賑わいが嘘のような静けさの中にある。全体的にシャッターが目立ち、空いているのは薬局と飲食店くらいであった。休日の方が本番なのかもしれない。

 そのままカレーうどん、と行きたい所だったが今度は電車のダイヤが許さない。未練を残しながら駅に向かう。記念にIRuCaを購入した所、他で使えないが大丈夫かと再三確認された。実際、今なおチャージが700円ほど残っており、使う機会は日常にない。またいつか使ってチャラとしたい。

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船の町

寺社とうどんと温泉

 しばらく琴電に揺られる。欲が収まらず、車中で次のうどん情報を調べていた。流石は琴電、沿線のうどん情報は中々の充実ぶりである。その中でも一つに目星をつけると、その最寄りから三駅ほど隣にある「一宮駅」という駅名に気がついた。その規模からてっきり金比羅宮が讃岐国一宮なものと思っていたが、あちらの歴史はそこまで長くないらしい。気になったので一宮→うどんのルートを取ることとした。

 

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白ポスト・消えかけことちゃん・ことちゃん・ことちゃん

 駅を降り、一宮に向かっていくとまず寺が見えてくる。その名も一宮寺である。

 

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 当初は別の名前であったが、隣に一宮が建立されるにあたって別当とされ、今の名前になったらしい。境内はそこまで広くないが、様々な建物が軒を連ねている。八十八カ所の一部らしく、お遍路さん関連の案内も多く出されていた。傘立てならぬ杖立てもある。

 

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世代交代

 参拝の後、裏側へ抜けるとすぐ一宮への入り口である。一礼して向かう。

 

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 讃岐國一宮、田村神社。創建は古く、相応に敷地も広い。種々の建物に湧水の庭園まで抱える立派な神社である。本堂も堂々たる佇まいで威厳を放っている。しかしそれ以上に、境内に異様な密度で立ち並ぶ信仰の数々に度肝を抜かれる。

 

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 入った南西側の入り口から北側までくねくねと参道が続いているが、その脇には所狭しと数々の石像が並べられている。観音様、犬、狐、七福神、男根と錚々たる神仏が居を構え、それぞれにキチンと鳥居や由緒の説明が伴っている。池の島には宮島社、連続鳥居の先には稲荷社、水の近くに龍神像と配置も抑えている。一つ一つは摂末社でよく見かける神仏であるが、こうも大集合なさっていると唯々圧倒されるのみである。それらが境内の隅に寄せられることなく参道脇に連なっているのでなおのこと印象が強い。全てとは行かないが、お参りしながら北側へ抜けた。

 

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 参拝後は東へ向かい、うどん屋を目指した。概ね普通の地方然とした町並みだが、三角山とため池が異彩を放っている。しばらく抜けると住宅街へ突入、右へ左へ行くうちに目的地のうどん屋、うどんの田が見えてきた。

 

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 ガレージめいた入口からこじんまりとした店内へ入る。ピークは過ぎたがそれなりに盛況の時間である。提供はお馴染みセルフうどんの方式であり、レンコン天を取ってからかけうどんを注文。席に着いて食べる。

 

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 あっさりとした出汁にコシとのど越しに優れた麺、これぞ讃岐うどんと拍手したくなるシンプルな美味しさであった。レンコン天もシャキシャキ感がたまらない。大変満足感のあるうどんであったが、後から店の名物が角煮うどんであったことを知り、若干後悔している。要リベンジ。

 

  食後は琴電を横切り、仏生山温泉へ向かう。仏生山の町並みはやや古く、時折和菓子や仏具の大店を見掛けたのが印象的である。しかしいずれもこの日は閉まっていた。 

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 駅から徒歩10分の好立地ににある施設。モダンな建物の造りが目を引く。内部も中々洒落ており、突き抜けた廊下には体に優し気な商品や各種の本がすらりと並べてある。

 程よい照明と大きく壁側に開けた窓といい、門外漢でも気を遣って作られたと分かるような建物であった。脱衣所にも露天風呂に面して大きな窓があり、脱衣所らしからぬ解放感を有していたことが記憶に残っている。露天から外は見えないが、中央に庭があって落ち着く眺めである。

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 見掛け倒しに終わらず、泉質まで素晴らしいのがこの温泉の凄い所である。お湯はかけ流し、ヌルヌルでややしょっぱい味と泡付きをもつ優れた温泉である。加温の無いお湯は特に特徴が強く、泡がひっきりなしに上がってくる。この時期はやや寒さが勝ったが、夏に行けばさぞ爽快な事だろう。そもそも四国で冷鉱泉以外に入れること自体が凄いのに、特徴までハッキリしているのだから大したものである。その割に入浴料は700円とそこまで張らず、24時まで営業と使い勝手はすこぶる良い。また行きたい。

 

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 入浴後には一瓶。お洒落空間の廊下には畳もあって居心地がいい。翌日以降の作戦を練りながらしばし休憩。グッズも見て回ったが、些か値が張るので冷やかしに留める。

 

うどんと公園

 再び町を通って駅へ。途中で日劇の劇場的なものを見掛け、未だあることに驚く。駅にはことでん駅図書館と称した寄付本で構成された本棚があった。閲覧自由、200円で購入も出来るらしいが、特に興味のあるものは無し。車庫があったので出し入れを眺めながら電車を待ち、来たところで乗り込んで北へ。 

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 ほどなくして栗林公園駅で下車。第三のうどん屋へ向かう。だいぶ高松に近づいたこともあって町並みが都市めいてきた。天気は更に傾き、雨がそぼ降るようになったが歩けないほどではない。旧街道をぬらぬら歩くと店に着く。

 香川出身の知り合い二人から勧められた名店、上原屋本店。人気も相当なようで、雨天平日の15時過ぎながら店内には少なくない人数が。早速注文コーナーへ向かい、かけうどんに加えて天ぷら二種とおでんも注文。ここは提供が完全セルフ方式で、会計時に貰ったうどんを湯がいてつゆを掛ける所まで自前で行う。その後は薬味を加えて席へ。

 

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 いたってシンプルなかけうどん。しかしこれがこの日一番と断言できる非常に美味しいうどんであった。何と言ってもつゆが良い。いりこ出汁と醤油が香り高く、これだけでもお代わりしたくなるほどうま味に満ちていた。麺も貫禄のコシとツルツル感、派手な所はないのにとにかく美味しい。詳細は覚えていないのにひたすら美味しかったということは記憶に残っている。サイドの天ぷらは普通に美味、おでんは食べたことのない海鮮つみれめいた味だったが中々うどんに合う。推薦してくれた知人には感謝してもしきれない。帰り際に持ち帰りセットを見て飛びついたが、出汁は別の所で作ったものだそうで落胆した。現地でしか味わえないのだろうか。

 

 満足感と共に店を後にし、栗林公園へ向かう。相変わらずの雨で、周辺に人はまばら。中でもあまり人と会わなかった。バカ広いのも一因だとは思うが。

 

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 入ってすぐの所にはボランティアガイドの方が数名おられ、声を掛けていただけたので案内をお願いした。栗林公園は国立公園で一位の広さ*1を誇る超大庭園で、案内も相応に時間がかかる。一時間も無料で案内してくださったおじさんには頭が上がらない。面白ポイントも解説も大量にあったが、日本三名園に選ばれなかった恨み節*2・松の手入れの話*3*4・クソデカエピソード*5*6などはことさら印象深い。チームラボとのコラボ*7など、裏方の企画頑張りも教えてくれた。

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 庭園としては水の配置と山の借景を意識したそうで、見張らせる場所から見ると絵画のような見事な眺めである。浜離宮を進化させるとこのくらいになるのだろう。

 

 一通り案内を頂いた後に再び一人で回った。まず初めに向かったのは商工奨励館である。明治に建てられた由緒正しい建物の中には、公園情報の他に地元の各手工芸の展示も為されていた。漆芸は特に凄かった。

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関連作品が調べても見つからない

 園内は木々に満ち溢れているが、その中でも松は至る所にある。解説を思い返しながら見ると中々面白い。偉人御手植えの松もわんさかあって逆に没個性的である。その他、季節柄梅園も咲き誇っていて美しかった。元は薬草園らしい。

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 自然美を活かした部分では水回りが素晴らしい。外周の滝、鴨がうようよいる池、そして一番デカい心字池などどれも見事である。前者二つはスケール一辺倒にならない配置の妙があって楽しかった。

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人工の滝、かつては手動で水を運んで流していたらしい

 歩いているだけで飽きず、計2時間ほどうろついてから土産物屋へ。ヤドン県グッズなど買って駅へ帰る。

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ナ゛ョナ スー ー

 三度ことでんに乗り、高松駅へ。駅ビアバーも楽しみにしていたが、情勢があってかこの日は閉まっていた。仕方ないのでJR高松駅へ直行、キオスクで酒とつまみを買って乗車。

 

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くし型ホームはターミナルの華

 特急フリーの切符を活かし、松山まで一気に2時間の特急旅を選択。JR四国らしいアンパンマン特急で、車内アナウンスもアンパンマンだった。車窓の海を目当てに右側に座ったがすっかり日が暮れており何も見えない。地図と駅メモを見比べながら、暗闇の途中駅に思いを馳せつつ過ごす。こういう時に周辺の情報が手に入る駅メモ駅ノートは役に立つ。残念ながら知った所で降りられる行程ではないが。

 寝たり飲んだりしている内に松山到着。

 

うどんと温泉②

 

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 到着時刻は20時半、町はすっかり静まり返っている。路面電車で向かった道後温泉も、空いているのはコンビニ程度。そこらの住宅街と何も変わらない、静かな道を歩いて宿へ向かいチェックイン。

 格安のゲストハウスながら、内装はヨーロッパめいた土壁で趣のある佇まい。かつて看板犬が存在していたらしく、亡くなった今でも随所にイラストや写真が見られる。遅寝早起き人間としては門限無しで電子錠式の入り口が嬉しい。荷物を置き、まずは夕食へ向かう。 

 空いている店が少ない中、有難いことに遅くまで営業している鍋焼きうどん屋のまんまへ入る。

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 鍋焼きうどんの他、地酒とお勧めされた昆布とじゃこのかき揚げを注文。鍋焼きうどんは卵が染みる温かい味。ここまでコシつようどんだらけだったので柔らかさが新鮮に感じる。じゃこかき揚げは中々の硬さで、しゃぶるように食べるとじわじわうま味が染み出してきて面白い。酒に合う。

 食後に店長と二三話をした。曰く、某の影響で中国観光客が減り、それに伴い客も減ってしまったとのこと。時間が遅いこともあるだろうが、確かにこの時は自分一人だった。副次効果として道後温泉が比較的空くようになった、というのは自分にとっては朗報である。ピーク時は脱衣所に列が出来るとのことだから恐ろしい。しかし今も油断ならないとのことだったので、急いで宿に戻って突撃準備を整える。ありがたいことに、宿に銭湯セットが常備されていたのでお借りする。

 支度を整えいざ突撃。坂を下るとそこには巨大な道後温泉本館があった。

 

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 この時は改修中で使えるのは大浴場*8のみ。他の浴場や休憩室は閉鎖されていた。それでもそれなりの規模で、入口には受付と券売所がキッチリ整えられている。金を払い、脱衣を済ませて浴室へ。

 浴室に入ると、まず中央の巨大な像が目に入る。湯口を備えたその円筒状物体は湯釜と呼ばれるらしく、刻まれた文字が古めかしい威容を放っている。その割に浴室はあまり広くない。浴室のスタイルは湧いた湯をそのまま使っている時代から貫徹しているのだろう。洗い場も外周の壁にカランが並ぶ形で、如何にも銭湯然としている。しかしながら壁から床まで石造りの構造であり、日常と隔絶された雰囲気の中にはある。重文は伊達でない。それでもまだ地域の銭湯として機能しているのが面白い所で、この時も時間が遅いにもかかわらず常時7人ほど滞在していた。値段も430円とお手頃。お湯は特徴が薄く、また塩素消毒の匂いがかなり強いこともあって泉質は微妙。

 いくらか温まってから外へ。暗い商店街を抜けてファミマで買い物、翌日の飲食を調達。土産物屋としても機能しているのだろうか、ポンジュース関連の商品が入口入ってすぐの棚で壁を形成している。気圧されてポンジュースを購入。

 

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POM

 その後は宿のドミトリーで就寝。

 二日目に続く。

*1:裏山も含めての面積だが

*2:幕末の藩主が官軍に弓引いたから明治で立場が悪くなった、他のより優れていると名のある学者も言ってた

*3:松は必ず上向きになるようカットする

*4:いい松はただ一人許された庭師しか手入れできない

*5:本来端にあるはずの武道場が拡張で中央になった

*6:裏山の松千本がマツクイムシの被害に遭った

*7:この日は週一の定休日だった

*8:神の湯

2021/1/13

行動

 8時起床。二度寝して9時。

 前日までは昼に食肉→壊れたUSBハブ調達→調布と動くつもりだったが、怠けて家から出られなかった。仕方ないので家で作業に取り組んだがこれもサッパリ。寝ながら本を読むこととした。

 途中で久々にALTER EGOを起動。エスの罵りの口上も文章も意外と覚えていて驚く。順列都市が課題図書になっていたので、おそらく9か月近く放置したものと思われる。ルールも何となく覚えていたので、ポチポチやってドグラマグラを読み進めた。

 昼を食べればと思ったが特に変わらず、夕までシエスタ。ダラダラ過ごして就寝。

 

 朝の二度寝と昼のシエスタで別々の夢を見た。

 朝のスタートはどこかのショッピングモールだった。天気はやや薄曇りの昼である。海の見える場所で、日本海側と認識していた。家族旅行で買い物をしており、しかし店には入らず通りを闊歩。しばらくすると日が傾く。その頃には施設を出ていて、別のスパリゾート的な建物に入っていった。夕時とあってか中々の混雑。少し並んでから受付。施設の全体的な印象はシネコンのそれに近く、受付の上側には何らかの時刻を示すモニターが置かれていた。ロビーは広々としており、受付の反対側には大きなガラス張りの窓が緩やかなカーブを描いている。外側には温水プールらしきものが見えた。

 親が受付を済ませた所で壁に沿って館内へ。廊下にはいくつかの小部屋と入口があったが、いずれも公民館の会議室めいた素朴な場所であった。歩いている内に窓から露天浴場が見えてくる。浴槽は海に面しており、プールサイド的部分も含めて広大。こちらからは見下ろすような位置にあり、間には堤防が建てられていた。向かっている途中から記憶が途切れている。次の場面では昼間、露天と似た形の広場で武道の実演を見ていた。師範の向こう側には東京駅(八重洲側)の建物があった。

 一度覚醒、再び二度寝に入ると場面転換。おそらく前回の続きで、列車*1に乗りながら南下。途中で温泉に寄ることを提案していたが、これは帰り際らしく、時間の調整が難航する。スマホでぐりぐりと調べる内に佃島駅近くの佃島温泉*2の存在を思い出す。操作に手間取って営業時間までは分からなかったが、何とかなると押し通す。するといつの間にか車に乗り換え、佃島の町までたどり着いていた。道路は堤防の上にあり、川を挟んで反対側に線路、その向こうに山脈がうっすらと見える。天気は相変わらず曇り。正面には更に高い山が聳え立ち、こちらは降りられそうな堤防なのに向こうは渓谷と化していた。しばらく進むと細い道に突き当たり、車を降りた。

 温泉への道が分からなくなったのでその辺のおじさんに聞くと、道を示してくれた。時間が遅いが大丈夫かと問われ、逡巡した後19時くらいに駅に着けばOKなんですが、と答えると大丈夫とのことだった。同時に温泉を褒め称えてもいた。似た名前の町の近くに住んでるんです、と二三話して温泉の方へ向かう。堤防の道と対岸はいかにも農業向きの平地といった風情だったが、温泉へ向かう道は漁港の如き急な坂と細い道で構成されている。その割に舗装はしっかりしており、また民家もひしめくように建っていた。少し上ると温泉に向かう入口が見えたので突入。内部は屋根付きの階段通路になっており、その左右には飲み屋や乾物屋が並んでいる。飲み屋の座敷では昼から宴会が開かれていた。この建物空中から見たら凄いよね、などと話しつつ上昇。

 出口からは四方に山が見え、左手方向に先ほどの渓谷と吊り橋が見える。正面には道が続くとともにケーブルカーの駅舎めいた建物があり、そこが受付兼更衣室のようだった。しかし受付の記憶はなく、次の場面では更衣室に居た。更衣室は開放されていて、正面には吊り橋が見える。相当長くて高いが、この向こうに温泉があるらしい。すなわちこちらで着替えて向かわねばならぬという事実に気がつく。母親が先に向かっていたので着替えは済んだかと問うと、半分くらい向こうで行うとのこと。父と共に着替えているうちに目が覚めた。

 シエスタの時の夢は全く場面が異なり、図書館に居た。母親と本の内容で議論になり、ヒートアップして大げんかになる。図書館の人がすっ飛んできて机を囲み、事情聴取された。途中で追加の人が来たが、この人は何らかのカウンセラーらしい。同席の上で長々と言い訳を述べつつ喧嘩していたが収めてくれていた。しばらくするとその人が席を立つこととなり、少しの待ち時間が生じる。その間にも母に対し小声で悪態をついたところ、母が立ち上がり一直線に窓へ向かった。追いかけるが間に合わず、窓から落ちて行く所を目撃。4階ほどの高さだったが樹上に着地、無事なように見えるも熊に変化した。慌てて反対側の窓から出て配管を掴み滑り降りる。急いで落下地点に向かうと仁王立ちする熊が居た。母さんと呼びながら近づくと、爪を出してベアハッグ姿勢に入っている。ああこの人はもう熊なんだな、と思いながらじりじりと距離を取る。やがて図書館の人も駆けつけたが、何もできずにらみ合いの内に起床。

*1:高山本線と認識していた

*2:どちらも架空

2020/12/26

行動

 9時起床。2度寝の後11時半に再び起床。

 既にバイトまで時間が無い。中華丼とパンの合わせ技でブランチとする。

 すぐに支度をして出発。

 

労働

 年内最後のバイト。人は多かったが先生も多かったので何とかなる。

 今年から来た先生がメチャ優秀で助けられた。流れで全時間メインになってしまったが、何とかなったのは彼のお陰である。来年も居てくれると助かるが、こればかりは分からない。

 昨日は割と休みが多かったものの、今日はそうでもない。クリスマスパワーか。

 この日は上りが遅く、外食するつもりだったが、うっかり連絡を忘れていた為帰宅後ご飯(海鮮丼)。母が見ている嵐の特番を背後から眺めた。ここ最近は特番続きで華々しいが、その先の活動休止を思うと寂しい。その後入浴、就寝。

 

 二度寝の前後で旅行の夢を見た。以下記録。

 初めはGoogleMapを眺める場面。九州の縮尺がややおかしく、宮崎の隣に足摺岬が来ている。種子島の辺りをズームし、右上の四国方向に向かうと謎の島が出てきた。足摺岬種子島の中間付近に位置しており、サイズは凡そ桜島ほど。航空写真モードでズームしていると突如一人称視点になり、島のフェリーターミナルのような場所にジャンプする。時刻は昼、ターミナルはやや混んでおり、漁師風の人が多い。張り出し屋根の下にシャッターの降りた店舗と机・椅子が並んでおり、そのうちの一つに座って休憩する。ターミナルから外は朧げにしか見えないが、概ね住宅街の様相で、雰囲気は小浜温泉に近い。机に地図を置いて再度眺めると、今いる島の左下に更に小さな島が見える。そこでここがフェリーターミナルだったことを思い出し、乗り場へ向かう。

 乗り場は奥まった入口から狭い階段を登った先にあった。階段の途中には各種のポスターが張られており、窓のない環境も相まって事務所めいた雰囲気がある。そのうちには時刻表もあった。8行程度とやや少なめではあったが、各時間に2~3本の航行があり、意外と密度が高い。乗車口にも階段まで長く続く列があり、離島ながら一般利用が多いんだな、住民の足かなと感じいる。時刻表の単位は確認しなかったので、もしかすると曜日ごとの表だったかもしれない。狭い階段で右に寄って一列に並んでいると、乗車取り扱いの案内が来た。階段の上に登ると受付がある。左半分がガラス戸、右側はガラスを挟んだ窓口、窓口の上に料金表、といった格好。財布を出し忘れており慌てたが、何とかなる。窓口で料金を支払って乗船口へ。

 船は水上バス程度の小さなもの。地図で見た港は外洋に面した湾のようだったが、実際乗り込むと日本橋川程度の幅しか無い水路である。対岸には工場のような施設がうっすらと見えていた。乗船後はデッキに陣取って景色を眺める。晴れて温暖な日ながら、砂ぼこりでも上がっているのか視界が悪い。しかし何らかの橋の下をくぐったことはハッキリと分かった。道中の記憶は曖昧だが、しばらくすると船着き場に到着。

 行先の船着き場はたいへん小さなもので、降り口の際に駐車場の受付めいた建物があるのみ。タラップを降りるとすぐに町のそばへ出た。目に付くのは大きな高架で、左側は途切れている。下側には鉄網が張ってあった。島で開発途上のまま放棄されたモノレール、と認識していた。少し歩くと道に出るが、舗装されていない土の道である。後ろに同じ船から降りた観光客が二人いる。どうやら史跡マニアのようで、石の塊(石碑?)を見ながら何か話をしている。道の側に寂れた商店があり、シャッターは折りていないが、空いている気配もない。高架方向へ向かい、T字路を左折すると町並みが見える。そこには江戸東京たてもの園で見たような看板建築がぽつんぽつんと並んでいる。その他は砂まみれの空き地ばかりで、人通りも少ない。よく保存されているなあと思ううちに起床。

2020/12/06

労働

 8時起床。二度寝、三度寝を繰り返し、最終的に起きたのは11時。昼飯を済ませてバイトへ向かう。

 今週は人がいたので楽な方だった。作業がメインの回なので指示も少ない。しかし統率には労を要する。明日はワンオペの可能性が高く、無事に帰れるとは思えない。

 夕食は味噌ラーメン。卓上トッピングの幅が広い所が強みで、マー油なども置いてある。貧乏性故にふんだんに使ってしまい、何を頼んでも似た味になるのが悩み。大体大量のニンニクと胡椒味になる。辛味だけが唯一のバリエーションである。

 

 二度寝を通して連続的な夢を見た。以下覚えている部分の記憶。

 何らかのカードゲームにおける賭けの末、福岡の久留米に辿り着いた。最初は第三者視点のムービーのような物が入る。寂れた花街の娼婦(和装だったので座敷の方かも)が徒党を組んでバスを強奪し、車内の老夫婦を説得して大きな港へ向かう。大きなクルージング船の寄港予定があり、そこで客を引いて借金を返すつもりだったが、船の乗客は一切見向きもしない。唖然と降りていく人を見ながら途方に暮れる、という所で終了。どうにかして一人称視点に切り替わり、港から久留米の町を散歩する*1。時刻は深夜、町へ続く道は県道クラスの規模ながら車は通らない。街灯は薄緑色。街に住宅は少なく、小規模な工場とシャッターの降りた商店が連なる。信号は相変わらず動いていたので従って動く。数分ほど歩いて港へ戻る気になり、別の道を歩いて戻る。道の右際は崖になっており、下側に巨大な工場が見える。この辺りのイメージは和歌山港に近い。

 歩いている内に夢の中で起床。このことをツイートしようとする。画面は概ね公式アプリだったが、プルダウン式の設定メニューが投稿画面に設けられており、非表示ツイート等を切り替えられるようだった。うっかり非表示で投稿してしまい、直そうともたついている内に現実で起床。

 二度寝後は博多に行く。とはいえ「ここが博多である」と認識しているだけで、実際にいるのはホテルの内庭だった。およそ20階建て以上はあるホテル四棟に囲まれた庭で、水路に囲まれた小高い丘と、何らかの像、及びそれを祀った祠がある。若者のグループ数人が近くにいる中を散歩。途中で高校の友人が登場。彼は先にこの辺りを回っていたらしく、写真を見ながら話を聞く(海外のものも混ざっていた)。途中でキスする流れになる。実際は不明ながら彼は彼女持ちらしく、色々と煽られる。その後ニ三アドバイスを聞いて別れ、ホテルへ戻る。吹き抜け横の廊下を歩いている所で起床。

*1:久留米は港町では無いので、北九州辺りのイメージと混ざっている可能性がある

2019冬磐越+温泉・三日目

野沢外湯巡り・朝

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 6時起床。前日の夜更かしが響く。しかし外湯はもう開いているのだから行かねばなるまい。身支度と用意を済ませ、早速外湯巡りへ。

 時間の都合か宿の自動ドアは動かず。鍵はかかっていないので、手でこじ開けて外に出た。まずは宿の裏手の坂を登り、松葉の湯へ。

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 外観からも分かる通り、二階建ての構造になっている。二階が浴場で、一階には湯船こそあるものの脱衣場も戸もない。洗濯場として使われているそうだ。初見ではそれに気づかず、明らかに風呂ではない雰囲気に戸惑った。一寸ほど周囲をうろついた後に二階に気づき、登って入浴。内部は比較的狭く、上部は木造、下には石造りの四角い湯船が鎮座している。

 先客のいない風呂は中々熱め。おおよそ43,4℃はあったと思う。先人によれば白濁している時もあるようだが、この時は無色透明だった。朝一番であることが影響しているかも知れない。お湯は麻釜からの引湯で、麻釜の湯とは引っ掛かる浴感が共通していた。硫黄臭は相変わらず存在している。

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暖冬ながら積雪あり

 40分ほど入って外へ。時刻はちょうど7時。昨日が嘘のような快晴で、空はうっすらと朝焼けを呈し、山肌を染めている。放射冷却の影響か冷え込みが激しいものの、温泉パワーを纏った身には屁でもない。寒さのお陰で雲海も出ているらしい。町の切れ目から眺めつつ、うねうねの坂をのたくって次の外湯に向かう。

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 元々の目当ては秋葉の湯だったが、この時はお湯充填中で入れず。さらに東へ進み、新田の湯へ向かった。

 

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 2018年にリニューアルしており、綺麗な新築ながらも湯屋らしい造りである。内部もピカピカで、綺麗な木目の壁と石タイルの床はどちらも心地よい手触り。しかし脱衣場は伝統ある浴室一体型。着替えて入ると、湯口にはアヒル隊長が鎮座なさっていた。

 こちらもお湯は麻釜からの引湯で、感触も概ね同じ。朝一番の熱いお湯ながら白い湯の花がちらほら見えていたのが印象的。松葉の湯には無かったので、引湯距離によるものだろうか。勿論硫黄臭と芯まで温まる浴感は共通している。

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融雪パイプ

 朝っぱらながら、自分含めて4人ほど浸かっていた。少し早めに退出。裏の神社に参拝してご挨拶、そのまま県道を歩いて一旦宿へ。

 

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 やや高い位置に造られた道ということもあってか、眺めが非常に良い。よそ見をしている内に到着。

 

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クリスマスなのでケーキ付き

 部屋に荷物を置いた後、昨日と同じ食堂で朝食を頂く。食堂自体は営業準備中で、ご家族と思わしき中高生が掃除をしていたり、小学生の子が出ていったり、ルンバが駆け回っていたりとたいへん家庭的である。朝食にもどことなく生活感があり、朝ドラ*1を見ながら食べていると妙な安心感がある。宿らしくおひつからのおかわりは自由で、キッチリ食い尽くした。

 食後はお茶を頂きながら行動計画を立てる。このままチェックアウトして出発するつもりだったが、調べている内にバスを一本後回しに出来ると判明。1時間浮かせて散策の時間とすることに。

 浮いた時間でやることといえば、当然外湯巡りである。県道を再度歩き、十王堂の湯へ。 

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 今までの湯屋建築に比べると実用感に溢れる、銭湯然とした建物。多角形の造りや上の丸い窓が一昔前のモダンを思わせる。こちらも二階建てで、一階には女湯や洗濯場が位置していた。男湯は二階である。

 中に入ると広さに驚かされる。今までの外湯に比べて浴槽が格段に広く、依然一体型であるものの脱衣場も広い。浴槽は青いタイル張りで、ここも銭湯感がある。お湯は大量に投入され、デカい浴槽からドバドバとあふれ出している。

 このお湯がまた激熱で、流れ出るお湯すら熱い。44,5℃はあったんじゃないかと思う。入ろうとして思わず声が出てしまった。入った記憶はあるので、水で冷ましたか何かしたのだと思う。

 お湯は透明ながら硫黄の印象が他に比べて強かった。後から調べると麻釜の他にも源泉を混合しているらしい。しかし長湯は出来ず、20分ほどで退出。最後の方には地元の方と思わしきお爺さんもいらしていたが、平気で入っていくので慄いた。

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奥の扉は洗濯場

 宿に戻ってチェックアウト。時刻は8時半、バスまでまだ1時間ほどの余裕がある。まずは観光協会へ。

 

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シュナイダー博士の像

 野沢の外湯と名所には金属板が置かれている。これは集印巡り用のもので、別途購入した集印帳の紙を擦り付け、カーボンシートの要領で記帳するという仕組みである。前日は営業時間外だったので朝に購入。流石に入った所を全て回収するのは難しく、温泉街を歩きながら目に付いたところを記帳。未記帳を含めても今回は7/13湯であり、再訪必至。

 

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 大湯までの道程を歩き、麻釜の手前で真っ直ぐ進むと急な階段が見えてくる。ここの上にあるのは千仏堂と湯澤神社である。まずは湯澤神社へ。散々お世話になったので帰りの挨拶がてら参拝。

 

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 続いてお堂の方にお参り。ここは野沢菜発祥の地らしく、種の販売も行っていた。

 

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 雪で色々あったらしく、何らかの工事が行われていた。それを除けば自分一人。眺望はさほど良くないものの、温泉街の寺社らしい静かな立地だった。集印帳の板もあったが、凍り付いていて押せず。

 帰りしなに土産物屋へ寄る。野沢菜を食べていなかったことに気がついたのでここで購入。流石に選り取り見取り、様々な商品が並んでおり、ほぼ全て近隣の生産者であることが更に悩ましい。2種類ほど買い、ついでにジュースなど買ってバス停へ向かう。

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道端には道祖神

 停留所付近の営業所で切符を購入、10分ほど並ぶとバスが来た。ここでもやはりインバウンドの観光客が多い。そこそこ遠いにも関わらず、座席ポケットには地獄谷のSNOW MONKEY TOURの広告が入っていた。流石は日本を代表する猿、人気のほどがうかがえる。

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雲が目の前に

 山を見ながら30分ほど揺られ、飯山駅へ到着。

 

1002-1445 飯山-長野-松本-小淵沢-甲府

 駅には調布でお馴染みの木島平村ショップがあった。親近感を覚え、水とおにぎりを購入。

 その後は18きっぷに押印して入場。列車を待つ間、予定について再考する。この日は21時頃には帰宅する必要があったため、やや早めの行動が必要となる。それでも沿線のどこかで2時間ほど確保できる見込みがあった。長野で善光寺か、松本で松本城か、下諏訪で温泉おかわりかなどと逡巡した末、甲府に決定。目当ては温泉である。

 飯山線沿線は昨日と同じく山ばかり。飯山の頃にはもう多少盆地に入っているが、それでも見えるのは山である。しかし、当然ながら、夜中と晴れた日中では印象が全く異なる。雪の積もった山々と田んぼを見ながら南下した。大半は寝ていた。

 1時間弱で長野着。ここからは篠ノ井線で松本へ。長野を出るとすぐに盆地の端へ駆けあがり、集落を見下ろすような位置に陣取って進む。個人的には、車窓の中ではこの位置取りが一番良いと思う。途中では絶景と称される姥捨駅に停車。車内からでも長野盆地を一望できた。

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 そのまま列車は山の中へ入る。聖高原という駅名を気にして調べた所、元の麻績*2駅があまりに読みづらいため、地元の要望で変えたと知る。現在は駅ホームに仏像が置いてあり、名に恥じない聖ぶりだった。そのまま山を進み、再び盆地に出た頃に松本駅着。

 松本駅からは中央線で南下。途中諏訪を通過、最早慣れ親しんだルートである。下諏訪・上諏訪・茅野の名前にそれぞれ体が動きかけるも我慢。すずらんの里を越えるとやがて小淵沢駅へ。

 到着したのは13時47分。ここでは20分の乗り継ぎ時間があったので、休憩がてら遅めの昼食とした。駅蕎麦は意外と混雑しており、購入してから席探しに難儀した。

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 中信スルーへの詫びの念を込めて山賊焼きそばを選択。汁が染みて美味い。揚げ物系のそばは関東だしの方が好ましい。

 

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展望フロアからは富士山が見える


 到着ついでに駅メモでレーダーを飛ばし、ゲーム上で山梨県の全駅制覇。まさか一番初めの制覇県がここになるとは思わなかった。アイコンが徳島県になるバグも含めて印象深い。

 山梨に入ると最早近所の感覚である。しかし山まみれの車窓は関東平野との差異をはっきり見せてくる。山に囲まれたまましばらく乗り、甲府駅へ到着。

 

1445-1720 甲府散歩

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 駅前には信玄公の像がある。挨拶してから南へ。

 反対側へ行った後は片側三車線のデカい通りに沿って南下。県庁所在地の中心らしく、通り沿いには県庁や警察署に地裁や検察庁まで軒を連ねる。城下らしい細かな升目の区割りも相まって、「都市」というべき繁栄ぶりだった。しかしどこからも山は見えるのが山梨らしい。

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有価物という分類を初めて知った

 30分ほど歩いていると大きな公園がある。その向こう側はごく普通の住宅街で、この中に今回の目的地がある。

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 遊亀温泉。見た目は明らかに町中の銭湯で、実際運用も内装も銭湯そのものだが、お湯はかけ流しの温泉である。自分も最近知ったのだが、甲府盆地は知られざる温泉王国であり、特に植物性のモール泉に定評があるとのこと。色湯、ぬるぬる、アワアワなど魅力的な特徴群に惹かれて来訪を決めた。ここもご多分に漏れずモール泉である。早速入場、番頭のおばちゃんから石鹸を買うと、リュックはその辺に置いといて良いと指示を頂く。ご厚意に甘えて安置、着替えて浴室へ。

 浴槽は複数あり、それぞれ温度によって分けられているようである。いくらか行き来した末、概ね41℃程度のぬるめの湯に落ち着いた。お湯はモール泉らしく茶褐色で、ヌルヌルスベスベとした感触がある。さほど強くないが独特の芳香も感じられた。いずれも長湯に適したお湯で、ドバドバと流れ出るお湯を見ながらしばらく入浴した。湯上りにもスベスベ感は残り、野沢とは対極的なサッパリとした湯上りが気持ちいい。色だけでなく泉質も良いのだから恐れ入る。これで入浴料はワンコイン足らず、しかも町中で入れてしまうのだから羨ましい限りである。着替えて退出、駅へ戻る。

  帰りも公園のそばを通る道だが、大きな神社を見掛けたので寄っていく。

 

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 こちらは稲積神社、正ノ木稲荷とも呼ばれる。旧社格は郷社、土地造成関連の由緒と長い歴史、領主からの氏神信仰、車のお祓いスペースと、いかにも地域の中心らしい神社である。年末ということもあってか本殿にはずらりと奉納品が並んでいた。社務所でも色々な取り組みが掲示されており、ブログの更新頻度も高く、頑張りぶりに好感が持てる。参拝し、御朱印を頂いて退出。

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 公園の中には動物園があるらしく、道の脇の金属板には動物の写真が並んでいた。ゾウのテル、ライオンのショウコなど可愛らしい名前が並ぶ中、寅に名付けられた「信玄」(しかも漢字)に並々ならぬこだわりを感じる。100周年とのことで、いつか来てみたいものである。 

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成立時期が分かりやすい

 帰りの道は大通りを外れ、一本裏の商店街を通っていくこととした。こちらは先ほどの都市ぶりに比べるとやや暗めの通りであった。食堂が多く、夜の町の雰囲気がある。

 そんな通りも突き当りまで抜けていくと商業施設に突き当たる。中を抜け、駅に帰還。軽い食事とカップ酒を調達して電車を待つ。しばらくすると帰りの中央線が来た。

 

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高密度おもちゃ屋

1730-2030 甲府-高尾-東京

 ここまで来れば後は帰るだけである。 外も真っ暗なのでほぼ睡眠時間。立川で乗り換える選択肢もあったが、始発を望んで高尾で乗り換え。高尾の辺りはまだ山中で街明かりも少ないが、東京に入った感覚を得て寂しくなる。クリスマスとはいえ平日、しばらくすると中央特快は混んでくるが、座り通して終点着。手慣れたルートで帰宅した。

*1:この時はスカーレット、親父が死ぬ回だった

*2:おみ

2019冬磐越+野沢温泉・二日目

0530~0815 寺尾散歩・寺尾~吉田~弥彦

 5時起床。身支度を済ませて精算、外へ出る。途中鼻血が噴出、備え付けのティッシュに助けられる。

 始発にも間に合う時間であったが、この日は別の目的があった。海岸線まで徒歩30分という立地を活かし、朝の日本海を拝もうという算段である。前日の常磐線で太平洋を見たこともあり、日本海を見れば東西セットでお得、などと考えながら歩いた。

 

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小さめのカーブミラーをよく見かけた

 

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町中のグローバル

 冬至も近く日の出は遠い。暗い住宅街を歩く不審さもよろしくないが、何より辛いのは寒さだった。家々に二重扉が用意されるような土地であり、容赦ない寒気が吹き付ける。気合と防寒で耐えるほかない。

 そうした苦難の末に辿り着いたのがこの景色である。

 

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交通量は物凄い

 音だけは聞こえるので、向こう側に海があることは分かった。しかし柵か何かで全く見えない。見渡す限り切れ目も無い。これほど下調べの重要性を知った日は無い。

 間の悪いことに、次の電車にはギリギリ間に合わないような時間。寒さで辺りをうろつく戦意も失われていた。凍え死ぬ前にファミマへ避難、カップ麺で凌ぐ。

 このように当時は落胆していたが、後からストリートビューで見た所、普通に柵の切れ目はあった。しかもそこから間近に海が見える。ただ暗くて見えなかっただけだろう。数分待っていられれば、あるいは帰り際に見渡せば...と後悔しきりである。

 

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日没の方で有名らしい

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救い

 20分ほど休憩してから駅へ向かう。ルート中で公園に遭遇した。近づくと結構な高さの階段があり、ウッとなったが最短ルートなので登る。

 

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 公園は高台になっており、来た道を振り返ると海が見えた。当初の想像よりは大分狭い。見られたので良しとする。

 

 駅の窓口はまだ開いていない。18きっぷ故どうしたものかとインターホンで聞くと、降りた所で判を押すようにとのこと。一時的なキセル状態になりつつ構内で待ち、7時きっかりに乗車。1時間ほど電車に揺られる。

 道中の車窓は田んぼ尽くしだった。とっくに収穫は済んでいるが、それでも田んぼと分かる。やがて市街地に再突入すると、すぐに吉田駅へ到着。ここで20分ほどの乗り換え待ち。

 

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 少しだけ出場して駅員さんにハンコを押して貰った。跨線橋から景色を見渡す他にやることもないので、既に来ていた弥彦線へ向かう。素人目で見ても古い車両だったが、暖房の効きは良かった。中でぬくもっているうちに発車。15分ほどで弥彦駅に到着し、ロッカーに荷物を預けて彌彦神社へ向かう。

 

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弥彦駅

0814~1149 弥彦山登拝

 駅から神社へは10分ほどの道程だった。道中はいかにも門前街といった装いであり、宿屋や土産物屋が立ち並ぶ。名物らしい饅頭の蒸気が魅力的だったが、どこも開いていないのでスルー。温泉も湧いているらしい。次は泊まりたい。

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たぬき風呂とは一体...?

 事前に調べて知っていたが、この先で使う予定だったロープウェイの運休告知を見掛け、再度落胆。ついでに持ってきた傘の取っ手が取れた。不吉。

 土産物屋の密度が高まり、いよいよ真打登場というタイミングで鳥居が見えてきた。くぐって参道へ。

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 越後国一宮彌彦神社続日本紀日本三代実録にも言及が見られる古社である。戦後に入ってから初詣で群衆事故が起きており、失礼だがそれを切っ掛けとして知った。それほど周辺の信仰を集めている神社なのだろう。

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 境内は程々の広さ。その割に建物が多い。弓道場や相撲場から鹿園や鶏舎までバリエーション豊かであり、建てられた年代も様々。ただ一の鳥居から本殿までの参道は木々に挟まれ、静謐な環境だった。まっすぐ歩いて拝殿に向かい、参拝。その後は本殿脇から後方へ続く道を伝っていく。

 神社の背後には弥彦山があり、彌彦神社の由緒では祭神が葬られた場所とされている。その為山頂には御神廟があり、山全体も神域であるが、登ることはできる。ロープウェイもあるが前述の通り休み、登山道から登っていく。

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冬山では細心の注意を

 登ってすぐの位置に茶屋らしきものがあり、雑然としている。しかし休み。紅葉も終わった冬山、概ねオフシーズンなのだろう。 

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 茶屋を過ぎた後はつづら折りの道を上がっていく。標高はさほど高くない上、道も整備されていて歩きやすい。そのためかオフシーズンながら人はそこそこ出ており、登山慣れしていそうな団体や地元民らしき方々を見掛けた。後者の方には話し掛けられ、出身を答えたり、道の状態を聞いたりした。拝見した限り結構な御年のようだが、毎日登拝しているとのこと。屈強。

 

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親切なやまおとこ

 暗い道が続くが、30分ほどすると視界が開けてくる。看板や休憩所もちらほら見られるようになってきた。足元は相変わらず悪く、空は曇りっぱなしだが、たまに越後平野が見えると気持ちいい。

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 同時期に鳥居も見られたが、祠や堂のようなものは見られなかった。ひたすらに参道が続いている。地域柄修験道の方と結びついてもおかしくないように思えたが、調べた所神仏分離の時にかなりカッチリやったらしい。在りし日は山麓の国上寺とも関わりがあったとのこと。

 さらに進むと再び鬱蒼とした道に入る。日当たりが悪い上に近くを小川が流れており、足元の悪さはピークに達する。整備されているとはいえ、滑りやすい石の上を通るような箇所もある。柵を掴みながら通過。

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左へ進むとアンテナ、右へ進むと展望タワー

 頂上付近には分岐があり、看板に従って左へ進む。すると突然アンテナ類が目に入ってきた。NHKのロゴを冠した建物もある。立地上越後平野に電波を届けやすく、各局のアンテナが集結しているらしい。前後の様子を考えると中々異質な風景ではあるが、山頂らしいといえば山頂らしい。

 

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 少し進むと鳥居と授与所がある。例によって授与所は休業中。

 

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 その奥には山頂があり、御神廟がある。鳥居をくぐって参拝、拝礼。

 

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 山頂周辺は非常に壮大なパノラマが広がっている。特に南西の越後平野側は開けており、よく見える。地平線の間際に至るまで、あらゆる場所に田んぼが広がっていた。収穫前には更に美しく染まった大地が見られるのだろう。

 

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 南方向には山並みが広がっており、その向こうに日本海と長岡が見えた。内陸方面へ流れていく信濃川が目立つ。

 

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 北西側はやや木が茂っていたが、その向こうに日本海を望むことが出来た。海を挟んだ向こう側には佐渡島が横たわっている。想像以上に近くてデカい。海の近さも面白い所。反対側はだだっぴろい平野なのに、こちらは山から下ってすぐ海である。

 

 佐渡と併せて国定公園とのことで、風景の解説パネルのような物も置いてあった。しばらく休んで風景を見ていた所、パラパラと降雪が。弱い雪とはいえ続かれたら困る。用心して下山へ向かうこととした。来た道を降りるだけなので気楽ではある。その上途中で雪も止んだ。

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登山道のショートカット地点にあった鳥居

 茶屋を過ぎて鳥居をくぐれば境内到着。再度本殿へ参拝し、御朱印を頂いた。続いて境内を少し散策。

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年始を控えた修羅場の様子
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大鹿トークンの群れ

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 帰りは行きと異なるルートで駅へ向かう。表参道を外れると至って普通の住宅街といった風情であるが、時折宿泊施設も見られた。前日に存在を知って歯噛みしたゲストハウスも途上に存在。良い所にあるな...

 駅に着いてリュックを回収、少し待ってから乗車。

 

1149~1508 弥彦~吉田~新潟・麺と酒

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見渡す限り

 弥彦線から吉田経由で越後線へ乗り換え、新潟へ。再度田んぼを眺めつつ進み、着いたのは13時前。すぐに駅を出て市街へ歩いていく。流石は県庁所在地、表通りを外れても茅場町程度の街並みはあった。10分ほどで見慣れたカラーリングの看板が現れる。

 

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 ラーメン二郎新潟店。2015年オープンと比較的新しめの店舗。30分ほど並び、食券を買って渡す。同時に全マシをコール。

 

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クリスマスらしい装い

 小全マシ。インスパイア並みの容赦ないヤサイの盛りがまず目を引く。豚もデカく、ニンニクもガッツリ入るため、味の威力が強い。スープの乳化具合も強めで麺は噛み応えのある平麺、まさしく二郎らしい二郎である。卓上に一味があるのも嬉しい所。ガッツリ頂いた。

 食後は再び駅へ戻る。構内を抜けて第二の目的地・ぽんしゅ館へ。

 店内はかなり広い。酒瓶がズラッと並んでいるイメージだったが、売り場面積は半分ほどとさほど広くない。残り半分にはおつまみ類が並び、こちらもまた魅力的である。特に味噌や醤油の試食は楽しかった。購買意欲を煽られる。

 しかしぽんしゅ館のメインといえば試飲コーナーだろう。店内奥へ向かい、500円を払って試飲用メダルを貰う。

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 ずらりと並んだ銘柄に圧倒される。コーナー内には酒のサポートも充実しており、熱燗マシンややわらぎ水、情報展示、つまみの味噌・塩など完備されている。何故かキュウリも売られていたので購入、塩で食べた。

 試飲した銘柄は真野鶴純吟(尾畑酒造),米百俵純米(板倉酒造),しぼりたて純米原酒(越後鶴亀),天領盃純米(天領盃酒造),加賀の井純吟(加賀の井酒造)。舌の都合であまり覚えていないのだが、米百俵の味の濃さ・それに対する越後鶴亀のスッキリ感と、何より加賀の井の圧倒的なメロン味が印象に残っている。試飲後は返却機でアンケート的な物に答えて終了。

 売店へ向かい、試飲を踏まえて買うべき酒を思案する。会津でもう土産の酒を買ってしまったのでこれ以上は増やしがたい。しかし気に入った酒は皆四合瓶以上のみであり、宿で飲むには少し多い。散々迷った末に関係ない上善如水の新酒を買った。ついでにカニ味のご当地コーラも購入。

 まだ予定の電車には時間の余裕があったので、少し土産物屋を物色。流石は越後、米菓の天下であった。その中でも亀田製菓は特に目立っている。

 土産用に柿の種クランチを、自分用にサラダホープを購入。これでええかと思った時に笹団子が目に入り、つい買ってしまう。ふと振り向けば海産物が目に入り、延々と買ってしまいそうだったので退散。早めにホームへ向かう。しばらく待って信越本線に乗車。

 

1508~1847  新潟~長岡~越後川口~上境

 クリスマスイブとはいえ平日、それなりの人出であった。途中乗換の長岡駅では帰宅ラッシュと重なり更に混雑。東京に比べれば軽いとはいえ、座れないほどではあった。20分ほど乗って越後川口で再度乗り換え、飯山線を進む。

 こちらは逆に人が少なく、学生が数人いるばかりである。クロスシートに乗れたがもう日没後、窓の外はほとんど見えない。山中の路線ということもあり、市街地を離れると街灯も稀になる。本を読んで時間を潰した。

 途中車窓が一瞬明るくなり、振り向くとイルミネーションが見えた。見た所民家の飾りつけらしい。人が住んでいること、イルミネーションが設けられていること、それが線路へ向けられていることに三重の驚きを感じた。突然のことで記録が取れず、今でも現実の出来事か分からない。

 それ以外は特にイベントも無く千曲川沿いを邁進。章を読み終わって素晴らしい読後感に包まれたり、水で有名な津南を通ったり、駅メモで途中駅の蕎麦屋情報を得ているうちに上境駅へ到着。降りたのは自分一人であった。ここから宿へ歩いて向かう。

 

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1847~2047  野沢温泉・夜

 飯山線には戸狩野沢温泉という駅もあるが、野沢温泉の最寄りはこちらの上境である。ここから歩いて60分ほどの距離。距離こそ前者に比べて近いがバス便は無い。すなわち徒歩が最良となる。

 駅周辺には民家もほとんど見当たらない。道は広いが街灯はまばらで心細い。星がやたらとよく見えるのは利点である。少し歩いていくと川沿いに温泉施設が見えたがここはスルー。千曲川を渡り、山の方へ向かう。

 野沢温泉への道はそれなりにしっかりしており、時折チェーン着脱場も存在している。しかし相変わらず街灯は少ない。聞こえるのは横を流れる川の音と車の通行音ばかり。この車の音がやたら響くため、遠くの車に怯えて路肩に寄ったりしていた。時々本物が近くを通るので油断ならない。

 幸いなことに途中に集落があり、進む方向には自信を持てた。その後は田畑が続くが、しばらく進むと上方に野沢温泉の大規模な街明かりが見え、勇気づけられる。しかし登りが続くことも同時に知らされた。

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宣言表示板が出迎えてくれる

 ガシガシ登ると野沢温泉村役場が見えてきた。ここから先は市街地となる。山中の温泉街と聞いてイメージされる物よりははるかに栄えており、小学校もあれば文具屋もある。明らかな中心が無いことも含め、普通の地方の町といった様相である。飲み屋やスキー用品店が多い辺りは観光地らしい。

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ケバブ屋もあるよ

 しばらく登ると宿に到着。二重扉を開けると食堂に入る。二階を宿として運用している形式だったので、レジでチェックイン。通された部屋は4畳半+8畳とかなり広く、一人では持て余すほどだった。荷物を置いて一息ついた後、階下の食堂へ。夕食無しのプランだったので適当に頂く。

 

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 インバウンドで大いに賑わっていた土地らしく、この店でも外国人客に完全対応。タブレットから多言語対応の注文システムを利用する形となる。実際にはす向かいのテーブルには欧米風の御夫婦が、隣のテーブルには中国のグループ客がいらしており、人気の程が伺える。よっぽど多いのか、自分も店員さんに英語で話しかけられた。

 

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 折角越後に来たんだし*1、米が食いたい!と考え親子丼を注文。うどんもこの店の名物らしいので注文。ついでに酒も頼む。おつまみ代わりに落花生がついてきた。隣の方々も同様に酒を注文していたが、落花生の食べ方で試行錯誤している様子だった。

 食事中にも次々と客が来訪、店内はおよそ8割ほどまで埋まっていた。平日なのに中々の繁盛ぶりである。しかしこのシーズンは暖冬、年末になってもまだスキー場が使えないとのことで、スキー客は比較的少ないはずである。オンシーズンの休日などどうなってしまうのだろうか。

 食後は部屋へ戻り、着替えて内風呂へ。内風呂は温泉ではなく水道水だったがそれなりに広く、汗は流せる。軽く入って整えた後はタオルと貸し出し用洗面セットを装備。勇んで外湯へ向かう。

 

2047~ 野沢温泉外湯巡り

 野沢温泉には13の外湯(共同湯)が存在し、その全てが源泉かけ流しがそれに近い方式である。外来の客でも寸志で利用できる上、朝は6時から夜は23時まで開いているという大変便利な仕様である。管理なさっている地元の方々には頭が上がらない。今回も有難く利用させて頂いた。

 それぞれの外湯は広い野沢の村内に点在している。この時はまず西側を回っていくこととした。まずは大湯へ。

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 野沢温泉の代表とも言える外湯であり、大きく立派な湯屋建築が目を引く。内部も広い。ただし脱衣棚と浴場がそのまま地続きになった構造ではある。野沢の外湯は殆どこれで、他には別府の共同浴場も同様の構造であった。これが原始的な湯屋の構造なのだろうか。大湯は比較的セパレートされていた方ではあった。

 中では硫黄臭がハッキリと嗅ぎ取れる。湯船はあつ湯とぬる湯の二つあり、大きな浴槽が木で仕切られた格好となっている。あつ湯は本当に激烈な熱さで、おそらく45,6℃はあったんじゃないかと思う。ぬる湯もぬる湯という割には熱め*2。透明ながら微かに白い湯の華が見られた。ピリピリと染みるような感触でよく温まる。

 流石は野沢温泉の顔、常時4~5人はいたように思う。皆ぬる湯に入るのでそこそこ混んでいた。温まった所で退出、次へ向かう。

 大湯の西方には旅館が立ち並び、間を細く曲がりくねった道が通る。進んでいくと視界が開け、それと共にかなりの湯気が飛び込んできた。

 

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 ここは麻釜と呼ばれる源泉で、国の天然記念物にも指定されているらしい。90℃近い高温のお湯が湧いており、昔から調理や麻の加工に用いられてきたとのこと。誰もいない夜中だろうとお構いなしに湧いていた。なお村民以外は立ち入り禁止。

 麻釜を過ぎて少し歩き、車道を曲がって突き当りの位置に次の外湯が見えてきた。二つ目は滝の湯である。

 

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 こちらでも寸志を収めて着替え、入浴。内装はタイル張りで銭湯めいている。湯船の奥ではお湯が滝のように落とされていた。

 ここは青緑がかったお湯が特徴的で、湯中には黒い湯の花もちらほら舞っている。浴感含め他のお湯とはかなり違った印象を受けた。硫黄臭はハッキリと存在している。この時の湯温は大湯のぬる湯に比べるとぬるめ*3。他に人も来ず、じっくり浸かれた。

 入浴後は麻釜の横を南下。この辺りが野沢温泉の観光的な中心のようで、夜も開いているお店を複数見掛けた。平日ながら客が入っており、中々に繁盛している。途中タオルを落としつつ坂を進み、下りきったところで次の外湯へ。今度は麻釜の湯である。

 

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 内部はコンクリとモルタルで構成されたシックな造り。例に漏れず脱衣場直結の湯船がデンと構えられている。麻釜の湯の名の通り、真上の麻釜からお湯を引いているらしく、お湯もかなり熱い。ここでも一人だったのでホースから水を流して冷ます。しばらく待つと何とか入れるようなった。シンプルな透明の湯で、やや引っ掛かるような浴感があった。やはり硫黄は香る。

 入浴後はまた西の方へ。川を越えて向かう。坂の下の分かりづらい位置に建物があり、少々迷ってしまった。上下に行ったり来たりしながら真湯へ到達。

 

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 他に比べやや浴室の幅が狭く、縦に高い造りである。湯口には花が添えられていた。室内には今までより格段に強い硫黄臭が漂っている。お湯は白くやや濁っており、大湯のあつ湯並みの激熱湯であった。

 何よりも印象に残るのは圧倒的な湯の花量である。流石に熱いので水で埋めていた所、水を入れたそばから大量の黒い湯の花が巻き上がる光景が見られ、思わず興奮してしまった。入れるほどに冷ますとお湯は強く白濁し、湯の花と併せて何とも面白い光景である。湯船に入ってみると湯の花は舞い上がり、消しカスめいて散らばっていく。浴感もスベスベで気持ちよく、五感を通して楽しめた。

 ありがたいことに始終一人。30分ほど入浴した。温まりが強く、少しのぼせてしまったが、湯上りに歩くとサッパリできた。多少は洗って落としたとはいえ湯の花の一部はまだ残っており、全身からの硫黄臭と併せて浴後もお湯の感触が続いていく。とても素晴らしいお湯だった。

 

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 出た頃には入浴終了10分前となっていたため帰還。23時とかなり遅い時間ながらまだ空いている飯屋や飲み屋はあり、つくづく便利な温泉街である。宿に戻った後は新潟で買った酒とコーラで晩酌。

 

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 丁度明石家サンタが放映されており、だらだら見ながら飲み食いした。途中の初詣CMで諏訪大社が登場、やや興奮。気付いた頃には2時を回っていたので慌てて就寝。

 以下は野沢温泉街の諸々。

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木製マンホール?

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妙に高値のレッドブル
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*1:野沢温泉村はもう信濃ではあるが...

*2:42,3℃はあったと思う

*3:それでも体感42℃弱くらい