2019冬磐越+温泉・三日目

野沢外湯巡り・朝

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 6時起床。前日の夜更かしが響く。しかし外湯はもう開いているのだから行かねばなるまい。身支度と用意を済ませ、早速外湯巡りへ。

 時間の都合か宿の自動ドアは動かず。鍵はかかっていないので、手でこじ開けて外に出た。まずは宿の裏手の坂を登り、松葉の湯へ。

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 外観からも分かる通り、二階建ての構造になっている。二階が浴場で、一階には湯船こそあるものの脱衣場も戸もない。洗濯場として使われているそうだ。初見ではそれに気づかず、明らかに風呂ではない雰囲気に戸惑った。一寸ほど周囲をうろついた後に二階に気づき、登って入浴。内部は比較的狭く、上部は木造、下には石造りの四角い湯船が鎮座している。

 先客のいない風呂は中々熱め。おおよそ43,4℃はあったと思う。先人によれば白濁している時もあるようだが、この時は無色透明だった。朝一番であることが影響しているかも知れない。お湯は麻釜からの引湯で、麻釜の湯とは引っ掛かる浴感が共通していた。硫黄臭は相変わらず存在している。

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暖冬ながら積雪あり

 40分ほど入って外へ。時刻はちょうど7時。昨日が嘘のような快晴で、空はうっすらと朝焼けを呈し、山肌を染めている。放射冷却の影響か冷え込みが激しいものの、温泉パワーを纏った身には屁でもない。寒さのお陰で雲海も出ているらしい。町の切れ目から眺めつつ、うねうねの坂をのたくって次の外湯に向かう。

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 元々の目当ては秋葉の湯だったが、この時はお湯充填中で入れず。さらに東へ進み、新田の湯へ向かった。

 

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 2018年にリニューアルしており、綺麗な新築ながらも湯屋らしい造りである。内部もピカピカで、綺麗な木目の壁と石タイルの床はどちらも心地よい手触り。しかし脱衣場は伝統ある浴室一体型。着替えて入ると、湯口にはアヒル隊長が鎮座なさっていた。

 こちらもお湯は麻釜からの引湯で、感触も概ね同じ。朝一番の熱いお湯ながら白い湯の花がちらほら見えていたのが印象的。松葉の湯には無かったので、引湯距離によるものだろうか。勿論硫黄臭と芯まで温まる浴感は共通している。

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融雪パイプ

 朝っぱらながら、自分含めて4人ほど浸かっていた。少し早めに退出。裏の神社に参拝してご挨拶、そのまま県道を歩いて一旦宿へ。

 

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 やや高い位置に造られた道ということもあってか、眺めが非常に良い。よそ見をしている内に到着。

 

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クリスマスなのでケーキ付き

 部屋に荷物を置いた後、昨日と同じ食堂で朝食を頂く。食堂自体は営業準備中で、ご家族と思わしき中高生が掃除をしていたり、小学生の子が出ていったり、ルンバが駆け回っていたりとたいへん家庭的である。朝食にもどことなく生活感があり、朝ドラ*1を見ながら食べていると妙な安心感がある。宿らしくおひつからのおかわりは自由で、キッチリ食い尽くした。

 食後はお茶を頂きながら行動計画を立てる。このままチェックアウトして出発するつもりだったが、調べている内にバスを一本後回しに出来ると判明。1時間浮かせて散策の時間とすることに。

 浮いた時間でやることといえば、当然外湯巡りである。県道を再度歩き、十王堂の湯へ。 

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 今までの湯屋建築に比べると実用感に溢れる、銭湯然とした建物。多角形の造りや上の丸い窓が一昔前のモダンを思わせる。こちらも二階建てで、一階には女湯や洗濯場が位置していた。男湯は二階である。

 中に入ると広さに驚かされる。今までの外湯に比べて浴槽が格段に広く、依然一体型であるものの脱衣場も広い。浴槽は青いタイル張りで、ここも銭湯感がある。お湯は大量に投入され、デカい浴槽からドバドバとあふれ出している。

 このお湯がまた激熱で、流れ出るお湯すら熱い。44,5℃はあったんじゃないかと思う。入ろうとして思わず声が出てしまった。入った記憶はあるので、水で冷ましたか何かしたのだと思う。

 お湯は透明ながら硫黄の印象が他に比べて強かった。後から調べると麻釜の他にも源泉を混合しているらしい。しかし長湯は出来ず、20分ほどで退出。最後の方には地元の方と思わしきお爺さんもいらしていたが、平気で入っていくので慄いた。

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奥の扉は洗濯場

 宿に戻ってチェックアウト。時刻は8時半、バスまでまだ1時間ほどの余裕がある。まずは観光協会へ。

 

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シュナイダー博士の像

 野沢の外湯と名所には金属板が置かれている。これは集印巡り用のもので、別途購入した集印帳の紙を擦り付け、カーボンシートの要領で記帳するという仕組みである。前日は営業時間外だったので朝に購入。流石に入った所を全て回収するのは難しく、温泉街を歩きながら目に付いたところを記帳。未記帳を含めても今回は7/13湯であり、再訪必至。

 

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 大湯までの道程を歩き、麻釜の手前で真っ直ぐ進むと急な階段が見えてくる。ここの上にあるのは千仏堂と湯澤神社である。まずは湯澤神社へ。散々お世話になったので帰りの挨拶がてら参拝。

 

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 続いてお堂の方にお参り。ここは野沢菜発祥の地らしく、種の販売も行っていた。

 

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 雪で色々あったらしく、何らかの工事が行われていた。それを除けば自分一人。眺望はさほど良くないものの、温泉街の寺社らしい静かな立地だった。集印帳の板もあったが、凍り付いていて押せず。

 帰りしなに土産物屋へ寄る。野沢菜を食べていなかったことに気がついたのでここで購入。流石に選り取り見取り、様々な商品が並んでおり、ほぼ全て近隣の生産者であることが更に悩ましい。2種類ほど買い、ついでにジュースなど買ってバス停へ向かう。

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道端には道祖神

 停留所付近の営業所で切符を購入、10分ほど並ぶとバスが来た。ここでもやはりインバウンドの観光客が多い。そこそこ遠いにも関わらず、座席ポケットには地獄谷のSNOW MONKEY TOURの広告が入っていた。流石は日本を代表する猿、人気のほどがうかがえる。

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雲が目の前に

 山を見ながら30分ほど揺られ、飯山駅へ到着。

 

1002-1445 飯山-長野-松本-小淵沢-甲府

 駅には調布でお馴染みの木島平村ショップがあった。親近感を覚え、水とおにぎりを購入。

 その後は18きっぷに押印して入場。列車を待つ間、予定について再考する。この日は21時頃には帰宅する必要があったため、やや早めの行動が必要となる。それでも沿線のどこかで2時間ほど確保できる見込みがあった。長野で善光寺か、松本で松本城か、下諏訪で温泉おかわりかなどと逡巡した末、甲府に決定。目当ては温泉である。

 飯山線沿線は昨日と同じく山ばかり。飯山の頃にはもう多少盆地に入っているが、それでも見えるのは山である。しかし、当然ながら、夜中と晴れた日中では印象が全く異なる。雪の積もった山々と田んぼを見ながら南下した。大半は寝ていた。

 1時間弱で長野着。ここからは篠ノ井線で松本へ。長野を出るとすぐに盆地の端へ駆けあがり、集落を見下ろすような位置に陣取って進む。個人的には、車窓の中ではこの位置取りが一番良いと思う。途中では絶景と称される姥捨駅に停車。車内からでも長野盆地を一望できた。

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 そのまま列車は山の中へ入る。聖高原という駅名を気にして調べた所、元の麻績*2駅があまりに読みづらいため、地元の要望で変えたと知る。現在は駅ホームに仏像が置いてあり、名に恥じない聖ぶりだった。そのまま山を進み、再び盆地に出た頃に松本駅着。

 松本駅からは中央線で南下。途中諏訪を通過、最早慣れ親しんだルートである。下諏訪・上諏訪・茅野の名前にそれぞれ体が動きかけるも我慢。すずらんの里を越えるとやがて小淵沢駅へ。

 到着したのは13時47分。ここでは20分の乗り継ぎ時間があったので、休憩がてら遅めの昼食とした。駅蕎麦は意外と混雑しており、購入してから席探しに難儀した。

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 中信スルーへの詫びの念を込めて山賊焼きそばを選択。汁が染みて美味い。揚げ物系のそばは関東だしの方が好ましい。

 

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展望フロアからは富士山が見える


 到着ついでに駅メモでレーダーを飛ばし、ゲーム上で山梨県の全駅制覇。まさか一番初めの制覇県がここになるとは思わなかった。アイコンが徳島県になるバグも含めて印象深い。

 山梨に入ると最早近所の感覚である。しかし山まみれの車窓は関東平野との差異をはっきり見せてくる。山に囲まれたまましばらく乗り、甲府駅へ到着。

 

1445-1720 甲府散歩

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 駅前には信玄公の像がある。挨拶してから南へ。

 反対側へ行った後は片側三車線のデカい通りに沿って南下。県庁所在地の中心らしく、通り沿いには県庁や警察署に地裁や検察庁まで軒を連ねる。城下らしい細かな升目の区割りも相まって、「都市」というべき繁栄ぶりだった。しかしどこからも山は見えるのが山梨らしい。

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有価物という分類を初めて知った

 30分ほど歩いていると大きな公園がある。その向こう側はごく普通の住宅街で、この中に今回の目的地がある。

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 遊亀温泉。見た目は明らかに町中の銭湯で、実際運用も内装も銭湯そのものだが、お湯はかけ流しの温泉である。自分も最近知ったのだが、甲府盆地は知られざる温泉王国であり、特に植物性のモール泉に定評があるとのこと。色湯、ぬるぬる、アワアワなど魅力的な特徴群に惹かれて来訪を決めた。ここもご多分に漏れずモール泉である。早速入場、番頭のおばちゃんから石鹸を買うと、リュックはその辺に置いといて良いと指示を頂く。ご厚意に甘えて安置、着替えて浴室へ。

 浴槽は複数あり、それぞれ温度によって分けられているようである。いくらか行き来した末、概ね41℃程度のぬるめの湯に落ち着いた。お湯はモール泉らしく茶褐色で、ヌルヌルスベスベとした感触がある。さほど強くないが独特の芳香も感じられた。いずれも長湯に適したお湯で、ドバドバと流れ出るお湯を見ながらしばらく入浴した。湯上りにもスベスベ感は残り、野沢とは対極的なサッパリとした湯上りが気持ちいい。色だけでなく泉質も良いのだから恐れ入る。これで入浴料はワンコイン足らず、しかも町中で入れてしまうのだから羨ましい限りである。着替えて退出、駅へ戻る。

  帰りも公園のそばを通る道だが、大きな神社を見掛けたので寄っていく。

 

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 こちらは稲積神社、正ノ木稲荷とも呼ばれる。旧社格は郷社、土地造成関連の由緒と長い歴史、領主からの氏神信仰、車のお祓いスペースと、いかにも地域の中心らしい神社である。年末ということもあってか本殿にはずらりと奉納品が並んでいた。社務所でも色々な取り組みが掲示されており、ブログの更新頻度も高く、頑張りぶりに好感が持てる。参拝し、御朱印を頂いて退出。

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 公園の中には動物園があるらしく、道の脇の金属板には動物の写真が並んでいた。ゾウのテル、ライオンのショウコなど可愛らしい名前が並ぶ中、寅に名付けられた「信玄」(しかも漢字)に並々ならぬこだわりを感じる。100周年とのことで、いつか来てみたいものである。 

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成立時期が分かりやすい

 帰りの道は大通りを外れ、一本裏の商店街を通っていくこととした。こちらは先ほどの都市ぶりに比べるとやや暗めの通りであった。食堂が多く、夜の町の雰囲気がある。

 そんな通りも突き当りまで抜けていくと商業施設に突き当たる。中を抜け、駅に帰還。軽い食事とカップ酒を調達して電車を待つ。しばらくすると帰りの中央線が来た。

 

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高密度おもちゃ屋

1730-2030 甲府-高尾-東京

 ここまで来れば後は帰るだけである。 外も真っ暗なのでほぼ睡眠時間。立川で乗り換える選択肢もあったが、始発を望んで高尾で乗り換え。高尾の辺りはまだ山中で街明かりも少ないが、東京に入った感覚を得て寂しくなる。クリスマスとはいえ平日、しばらくすると中央特快は混んでくるが、座り通して終点着。手慣れたルートで帰宅した。

*1:この時はスカーレット、親父が死ぬ回だった

*2:おみ