六月二十四日
四日目で忘れたかと思いきや五日目だった。大差はないが。
・バイト
梅雨だと仕事が少なくなりがちである。何とかはなった。
・食事
昼食は揚げ鶏うどん。生協食堂の鶏肉系メニューは辺りが多い気がする。
夕食はなだ万の弁当。あまりを貰ってきたらしい。流石に美味しい。しかしサイズ・味ともにご年配向けではある。
・読書
まずは昨夜と合わせて、百億人のヨリコさんを読み終わった。その後はバイトの合間に友人と生協書店を物色し、色々買った。SFに詳しい友人だったので、いろいろと教えて貰えたのは有難い。帰ってからはHELLO WORLDを読み、読み終わった。
・百億人のヨリコさん(似鳥鶏)
寮や寮生の面白さもさることながら、前半の雰囲気からの後半への急転回ぶりが凄かった。表紙買いで大当たりを引けたことは喜ばしい。
以下ネタバレにつき反転
一昨日の日記にも書いたように、最初の舞台は「変人が集うおんぼろ学生寮」とどこか登美彦氏的なテイストを感じさせる。迂遠な言い回しもそれに類似したものだ。しかし通して読むとかなり毛色が違うと分かった。
文章で言えば、氏が近代小説的な文章が胡乱さを醸し出していることに対し、こちらはやや現代寄りの文章である。「私」や先輩や小磯が、一般人に見せかけながら妙な思考回路を所持している点においては共通している。
それ以上に大きいのは主軸とする内容の違いだろうか。登美彦氏は変人の人格を想像することに長けている。上田誠との対談では、変な人や狸を放り込んで動きを考えるところから話を作ると語られていた。それに対し、上田誠は変な舞台を作って一般人を放り込むことが非常に上手いとも語っている。この作品は後者に属するものだと思う。
舞台となる寮の奇怪さは帯で語られているとおりである。パンツダケや四神様や節足動物と暮らし、時には詭弁を弄しながら折り合いをつける大学生はそれだけで面白い。その中で特にヤバい現象が天井に張り付く「ヨリコさん」という血塗れの女性、というような扱いで序盤は進んでいく。青春コメディかな、と思いつつ読み進めていた。
中盤はヨリコさんの正体を推察するパートに入る。超常現象を理論的に解析する試みは、事実を整理する流れが丁寧に描かれており読みやすい。ミステリに定評のある著者とのことで、この辺りは怪奇ミステリ風に見える。寮生の属性をフルに生かして推理を進めていく様子も面白い。
話がSF寄りになった辺りで事態は急転する。まるっきりパニックホラーである。「他人の恐怖がフラッシュバックする」という現象で何が引き起こされるか、その時刻絵図が怒涛のごとく描かれていく様子はこちらにも恐怖を感じさせる。その中でも大してノリを変えずに解決策を探す寮生達はかえって頼もしい。でも飛行機に乗るのは若干事態が予想できたやろとは思う。
終盤の幻覚描写は異常に真に迫るものがある。特に小磯君が一人になった後の描写は、薬やってんじゃないかと思わせるほどの迫力である。それほどの極限状況下でありながら話の流れを失わない作りの上手さに感嘆させられる。「他人の恐怖」というテーマの下で、中盤でちょろっと語られた寮生達の過去を生かしてくるのもよい。そして彺さんが滅茶苦茶カッコいい。
ラストは少しあっけないものではある。しかし「折り合いをつけていく」という寮生達の生き方を解決の糸口にするのは良く出来た話だと思う。エピローグの楽観的なホラーシーンはかなり好きだ。
舞台と台本が非常に良く出来ていた分、寮生のキャラについては舞台装置としての属性だけで出来ている感が強かったと思う。彺さんは中国人・武術の達人・足が不自由・ソフトウェアの天才という所と悲惨な過去以外は特に情報を得られないし、他の寮生もそんな感じであった。同じ寮に住んでいる他人の得体の知れなさを表現しているのかもしれない。最後まで先輩の学部と名前が判明しなかった辺りはミステリアスで好き。
ヨリコさんの謎を追うという本筋を通したまま、ジャンルと舞台が怒涛の如くうねり変わる大変面白い作品だった。調子よく読めるので、他人にもガンガン勧めていきたい。心臓が極端に悪い人へはお勧めを控える必要があるかもしれない。
著者の過去作品(ミステリ)も面白そうである。読んでいきたい。
表紙と帯は若干詐欺だと思う。嘘は全く書いてないけど......
・HELLO WORLD(野崎まど)
秋に映画化される作品である。大仰なキャッチコピーが気になっていたし、友人が同作者の本を面白いと言っていたので手に取った。何より京都である。
セカイがひっくり返るとの言葉通り、いわゆるセカイ系であった。強い意志が(文字通り)世界を変えていく。壮大で熱い恋愛青春小説だった。SFに明るければもっと面白かったであろう点が惜しい。
以下ネタバレにつき反転
まずは京都要素の濃さがとても嬉しい。通うのは堀川四条の高校であり、走るのは鴨川沿い~伏見稲荷の段、書店は大垣書店四条店、一行さんの邸宅は上賀茂の方、語らうのはデルタ、襲い掛かってくるのは京都タワー、ラストは京都駅の大階段と、何から何までフィットする京都ぶり。作者東京都出身と見て驚いた。友人が面白いと言った同作者の本も京都だったし、強みがある。映画の宣材にあった風景もそれが同じように描かれており、その点は非常に期待している。また、京都で恐怖の対象、というときつねの面を付けた人間が良く出てくる気がする。きつねのはなしでもそうだった。確かに不気味ではある。それが塊になって飛んできたらなおのこと不気味である。
恋愛小説要素は王道なものであるが、それ故に安定感がある。未来の自分が先生として助けてくれるところもそれっぽい。一行さん以外への描写が雑なところも後の展開を見るとうなずける。勘解野小路さんはもう少し見てみたかったが。「未来の自分」の登場のさせ方も既にそういうSFがある、と文中で書いてあった。電脳世界にいる人間がそれが現実であるか仮想であるか区別できない、という概念は面白いと思う。順列都市も読まねば...
中盤以降、その「先生」を登場させるためのSF要素が大きく絡んでくる。先生=堅実君の絶望と執念を同時に描く、複雑に絡んだ構造には感嘆する。新出の概念が湧きだしてきながらも読む勢いを損ねないのは文章の強さなのだろうか。
その過程で繰り返される入れ子の世界には目が回った。というかしっかり判別できている気がしないのでもう何度か読み返すべきだろう。
総じて王道ストーリーながら面白い作品だった。君の名は。などに近いかもしれない。映画はどうなるだろうか。脚本が上手く作られていなくても、この京都感が再現されていれば満足してしまう気がする。
表紙にも注目。映画では角がパズルのピースになっていた気がする。
SF小説も色々と買ったので読んでいきたい。積読が増える...
・その他
あれよあれよという間に明日が文トレ課題の提出期限である。なお白紙。ヤバい。後回し体質が本領を発揮している。
間に合うだろうか...
・テラリア
やっている場合ではないが、息抜きと称してやりそうな気がする。
TODO
・ガルパンを観る
・プログラム再構築
・輪講資料作成
・文トレの課題
・セミナー資料作成