2019秋京都・五日目

西陣・朝

 案の定というか、深酒が祟って寝坊。確かに目覚ましはかけたはずだが、菓子類の袋も開けっぱなしということはおそらく寝落ち。夢だったのかもしれない。7時半起床と、昨日よりはマシな時間ではある。

 身支度を済ませた後は階下で無料トーストを頂く。宿泊者同士のコミュニケーションを狙ったものと思われ、実際欧米の方もおられたが、国際交流の難易度には勝てず。無言で食し、トイレを済ませて出発した。トイレ(写真右)まで趣があるのは凄い所。

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町家改装の風情ある宿

 バス停まで少し距離があるので、西陣の街を散策しながら進む。昨夜は見えなかったが、伝統に満ちた町並みである。右も左も茶色の町家、歴史的な碑が事なさげにスポーン、一定間隔でお地蔵様登場と上京区らしい風格。しかしながらごく一般的な一軒家もあるし、掲示板もある。東山辺りに比べると生活感が強い。狭いガレージに芸術的な収まり方をしていたり、瓦屋根の一部だけトタンにして室外機を置いたりと、古い家と上手い事共存しているのが良かった。見ている分には気楽だが、築百年超木造住宅のメンテなど想像するだけでもしんどい。

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 うろちょろしていると大通りに出た。ここからバスに乗って西へ。

 

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良いロゴ

 

嵐山・中心部

 一昨日は東、昨日は北と京都の外縁を攻めてきた。そうなれば今日は西である。

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 洛中から遠いとは言え天下の嵐山、九時にはもう人で溢れていた。幸いなことに渡月橋はまだ埋まっておらず、先に渡ってしまうこととした。

 

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 阪急からくる人に逆行し、初めに向かったのは法輪寺である。入口は分かりづらいが、脇道を抜けると長い階段が見えてくる。登りつつ、途中で脇の摂社に寄る。

 

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錚々たる顔ぶれ

 十三まいりで有名な御寺、ということは後から知った。我々にとって重要なのは電電宮の存在だろう。元は神仏習合の頃に建立された鎮守社で、当然電気など関係はなかったのだが、星にまつわる『電電明神』が祀られていたことから今の信仰を得るに至る。参拝して研究の無事を祈り、芳名板を見てラインナップに驚いた。

 

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狛牛・狛虎

 その後は階段を上まで登り、法輪寺へ参拝。求聞持法で有名な虚空蔵菩薩が御本尊であり、こちらでも研究の無事と平穏を祈る。その後社務所を見たりした。ここの展望台は眺めが良いのだが、残念ながら工事中。墓地の脇の細道を抜け、渡月橋へ戻る。

 

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 支流を渡って渡月橋へ、としたところで鳥居が見えた。気になるので参拝。

 

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 櫟谷宗像神社。松尾大社末社である小さな神社だが、その歴史は古く、社殿は平安以前に遡るという。桂川を見下ろす位置にあり、水に関連する神様が祀られていることから、その辺りの信仰があったのではないか、とのこと。実際に渡月橋や対岸がよく見える。

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境内から渡月橋を望む

 参拝後、ベンチで少し休憩してから渡月橋に戻り、嵐山のメインストリートへ。この通りは流石の超混雑。その中でも突撃する人力車、プロの技が光る。

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風刺か?

 

 天龍寺の境内に入った所で大雨に降られ、急いで拝観受付へ。まずは庭園。折角なので普段は行かない方丈も拝観することとした。

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 相変わらず綺麗な庭で、紅葉の頃なのだから更に絵になる。山には雲がかかり、十二分に借景の役割を果たしていた。

 

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 大方丈はザ・方丈といった形の平たく広い建物で、敷き詰められた畳が何とも気持ちよさそうであった。入れるのは広縁だけだったが。雨を聞きつつ渡り廊下で小方丈へ向かい、参拝して庭に出る。雨上がりの功績というべきか、葉も花もつややかで綺麗だった。

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 しばらく散策した後に入口へ戻る。御朱印を頂いた後、法堂へ向かった。天井の龍が凄い、というのは聞いていたのでそれ目当ての参拝だったが、堂内が広い上に仏壇が滅茶苦茶豪華でそちらに目を引かれた。天井が高いので余計広く感じる。龍も想像以上の規模で、細部を眺めていると首が痛くなる。

 

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 境内を出た後、北方向に向かって歩く。天龍寺を過ぎればメイン通りは多少人が減ったが、竹林の道に入って再び急増。見渡す限り人だらけだが、上を見れば竹しか見えない。都合よく雨もやみ、竹漏れ日がよく射していた。

 

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 竹林を抜け、野宮神社へお参り。源氏物語にも登場した由緒正しい神社である。伊勢の斎王が身を清めた場所ということで、その縁もあるのか、今はえんむすびの神様としての信仰が厚い。独り身二人にとってはやや肩身が狭い。

 参拝後は再び南下、嵐山公園に向かった。ここは去年来た時にもいい紅葉が見られた場所で、紹介のために向かった。

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 今年は少し早かったが、相変わらず雄大な渓谷を拝めた。幸運なことにトロッコ列車にも遭遇。

 しばらく眺めてから坂を下る。公園の方にもちらほらと紅葉が生じていた。下り続けると桂川に到着、茶店や船を眺めながら川下へ。ここで飯を食べるのが最適行動だったが、すっかり忘れたまま移動。やがて渡月橋に到着。

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 嵐山を概ね回り切り、じゃあどこに行こうかと相談になった。中々の人混みで疲れていたこともあり、もっと人がいない所を目指す方向で合意。

 

嵐山・南北

 まずは北側、大覚寺へ。

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HITACHIがお出迎え

 入口で拝観券と宝物殿の券を購入。境内はべらぼうに広く、堂宇がずらりと並んでいる。皇室ゆかりのお寺ということもあり、寺というより別荘のようなゆったりとした造りである。順路に従って拝観。お遍路ゆかりの仏様や砂を集めた部屋、写経部屋、何らかの屏風が展示されている部屋など、広い境内を活かして様々なものが見せられている。コンテストが行われていたらしく、順路沿いの庭には菊が多数展示されていた。

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嵯峨菊発祥の地

 しばらくしてから最奥部の本堂に到達。五大明王が祀られている。広い大沢池を間近に望む立地であり、西側の静かな庭と東側の華やかな池の対比が美しかった。その後は引き返して霊宝館へ。詳しくは覚えていないが、皇室ゆかりの品々が小物に至るまで展示されていた印象がある。そして手紙が多い。

 見学の後に入口へ戻り、御朱印帳を受け取りつつ売店を眺める。休憩所もあるのが嬉しい所。休憩の後、大沢池へ。ここもたいへん広く、丁度晴れた空を映していていい眺めだった。

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 周辺の紅葉も色づいており、上下の空色の中を帯のように通るさまが美しい。昨年夜に訪れた時よりも探索可能エリアが広く、対岸や蓮池も歩けて楽しかった。売店も健在。観月会も行われているとのことで、水面に映ればさぞかし綺麗な事だろう。

 

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鎮守社

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蓮池(枯れてる)

 参拝後はバスで再び嵐山中央部に戻り、更に通り過ぎて南下。今度は自分の希望を通してもらい、松尾大社へ向かう。

 既に14時半を回っていたが、飯を食っていないことに気づく。しかし周辺には手ごろな食べ物屋が無い。そこでコンビニでカップ麺買って食おう、という流れになったが、買ってからイートインスペースが無いことに気づく。二人とも相当疲れていたらしい。折り悪く雨も降ってきたため、コンビニの軒先で震えながらカップ麺をすすることに。京都まで来てこんなことさせたのは申し訳ない...

 しかしラーメンの力は強く、少しばかり気力を回復させて松尾大社へ。

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 秦氏ゆかりの神社。その由来もあってか、酒に関して広く信仰を集めており、境内には酒の資料館が存在する。規模も大きく、酒造業の強さを感じる。秦氏関連だけでなく水という点でも酒に繋がりがあり、境内には御神水が湧いているとのこと。お参りした後、資料館へ向かって酒の歴史を眺める。

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諏訪の酒もある(探してみよう!)

 その後は少し南側へ移動し、摂社の月読神社へ。

 

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 名前はよく知られているのだが、記紀での描写が非常に少ないことで知られる月読尊が祀られている。聖徳太子にも縁があるらしい。古代史にロマンを見出す人にとっては垂涎ものの謎に満ちている。境内は大社とは異なり至ってシンプルで、住宅街の中に静かに佇んでいた。

 

 参拝後、17アイスを食べつつバスを待った。新幹線であったためもう次は帰宅、という時間だったが、問題となるのが夕飯である。取り敢えず四条大宮に出てすがりを目指したが、どうもこの日はお休みの御様子。しかしラーメン欲は消えず、相談の末駅近くの新福菜館へ向かうこととした。京都駅でバスを降り、東へゆるりと歩いて向かう。

 

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 特大新福そばを注文。びっくりするほど濃い色をしたスープが特徴的。見た目ほど味は塩辛くなく、それでいてしっかりとした醤油味がたまらない。チャーシューにもよく合う。卵が絡まるとすき焼きめいてなおのこと美味しい。

 食後は京都タワーに後ろ髪を引かれながら駅へ。家族に頼まれていた551を買い、友人にも爆推し布教。たまたま豚まんの日だったらしく、妙な縁がある。その後はビールを買って新幹線へ。駅メモでもやるかと思っていたが爆睡、気がついた頃には東京に戻っていた。家の近くで解散、帰宅後泥のように就寝。