まだまだ東山を歩きます。
南禅寺を出た後は北へ進む。道中で再びチェリオ自販機を発見した。京都旅行の楽しみの一要素と化している。
見た目から味が想像できない飲料を見かけると、つい買ってしまう。半ばギャンブルめいた気分である。中身はオロナミンC風飲料だった(と思う)。
外からも溢れんばかりの紅葉が見られる。否応なしに期待が高まる。
他の名所と比べて抜き出た点はもう一つあった。圧倒的な人の多さである。沿道からしてもう人が多い。時間帯の差異があるとはいえ、外の混雑ぶりは東福寺すら凌駕する。
境内に参るまでのすべての要素が期待を高めてくる。もみじの永観堂たる所以だろう。
そしてその期待は遥か上方向に裏切られることとなる。
拝観料の取られない、入口からしてこれである。他の場所にあればひとかどの観光地を名乗れるような紅葉が、入口の時点で鎮座ましましている。それも沢山。寺でテンションを上げるのはどうかと思わないでもないが、上がってしまった。
その日は天気が良くなかったが、気にならないほどに鮮烈な色をしていた。鮮やかさは今回訪ねた名所の中で最も優れているのではないだろうか。
前述したように、ここはまだ有料拝観の外である。拝観券を買って中に入る。
正式な寺号は禅林寺。初めは真言宗の寺だったが、永観という僧侶が住職の時に浄土宗の寺となった。「みかえり阿弥陀」として知られる仏像が有名。
中に入ると建物が見えてくる。紅葉は建物の配置や庭園に合わせて整備されており、美しい。
永観堂は主要な建物の多くが繋がっている。北端の建物から入り、内部を拝観させていただく。丁度寺宝展も行われていた。
入口で御朱印帳を預ける。一時間ほどかかるとのことだった。人の多さが異次元に達している。
仏様が描かれた掛け軸や絵を眺めつつ、建物をゆっくりと回る。古い門や枯山水がちょくちょく目に入る。京都の寺社の例に漏れず、江戸に入ってからの再建がほとんどだが、造りは鎌倉のそれである。
中庭のこじんまりとした紅葉もまた良い。道中至る所に紅葉がある。
釈迦堂を回り、御影堂へ向かうと法話が行われていた。上人を拝んで裏へ回る。御影堂のすぐ裏は崖になっており、そこを這う様に廊下が続いていた。そしてそこにも紅葉がある。
裏を進むと、笛の練習をしている僧侶を見かけた。法話で使うのだろうか。
他ではあまり見られない注意書きであった。
斜面に沿う所で廊下が二つに分かれていたが、一方は通行止めとなっていた。もう一方の阿弥陀堂方面へと向かう。
阿弥陀堂にはご本尊のみかえり阿弥陀如来が祀られている。みかえっていた。拝んだ後、外に出る。
ここまで廊下を登ってきたので、下に戻るためには階段を降りる形となる。紅葉の数々が見渡せる良い場所であった。
下に降りると、先ほど見た紅葉の下をくぐることとなった。これもまた美しい光景であった。
階段下からはいくつか道が分岐していた。南側に向かうと滝と句碑がある。さらに向こうには永観堂幼稚園があった。寺に併設された幼稚園は京都ではよく見る気がするし、珍しいものではないのだろう。紅葉の混雑をよそに、日常生活している様子が垣間見えた。
行き止まりであったため引き返し、多宝塔方面へ向かう。
晩秋らしく、ここの地面にも広く絨毯が敷かれていた。
途中御影堂の脇を通り、廊下の下をくぐる。進むと先ほど眺めた岩肌の紅葉が見えてくる。
他の紅葉と異なる独特の色をしており、綺麗である。そのまま進むと先ほどの分岐で進めなかった側の階段に出る。上がると開山堂及び多宝塔がある。
この寺で一番高い所にあるのがこれらの建物であり、当然眺めは素晴らしい。東福寺とはまた違った趣がある。時刻は3時を回り、西日に染まり始めた境内と市街が得も言われぬ雰囲気を醸し出す。エモい。
しばらくした後に降り、再び境内を散策する。
上から見ても分かる通り、真っ赤な紅葉が大半を占めるが、カラフルな一角もあった。どうやら種類が違うらしい。根元の表示を見ると様々な品種が書かれている。サトウカエデもあった。残念ながら樹液は漏れていなかった。
順路に従って歩くと池が見えてくる。
紅葉と池が合わないはずがない。背後にそびえる堂塔や東山との調和も美しかった。
池の端を歩いてくと水路が流れており、境内の遊歩道めいた場所へと繋がっている。
川を流れる紅葉も格別である。もう少し遅い時期なら唐紅に水くくるのだろう。
あらゆる方向にもみじがある。古今和歌集に詠まれる(定かではない)紅葉は伊達ではない。写真で上手く残せなかったのが惜しい。今でこそ鮮明に覚えているが、後で忘れてしまうのが悲しい所である。また機会があれば記憶を更新したい。
じっくり歩き回り、頃合いを見て出口へと向かう。人の波は絶えない。お茶処も大繁盛している。そそくさと人の間を抜け、御朱印帳を受け取って外に出た。
そのまま蹴上駅へと歩き、荷物をロッカーから取り出して電車に乗る。京阪三条駅から京阪に乗り換え、向かった先は出町柳である。
その5へ続く。