3日目は洛東へ。
河原町通り某所のネカフェで起床。今度は予定どおり5時に起きられた。
身支度を済ませ、コーラをがぶ飲みしてから出る。まだ日は昇っておらず、外は真っ暗だった。通りには人も車も少なく、店もほとんど開いていない。我が物顔で通りを南下し、東に曲がって鴨川方面を進む。
途中で木屋町通りを横切った。こちらにはちらほら人がいる。流石は夜の街である。路上にゴミ袋と中身の残骸があったり、あまり見たくないものがある辺りも夜の街らしいところだろう。綺麗に細々と流れる高瀬川が何とも対照的であった。
そのまま進むと鴨川に突き当たった。この時間だとまだ等間隔カップルはいない。犬はちょくちょく走ってくる。
少し南下して四条大橋を渡り、四条通を東に進む。こちらの通りも真っ暗である。
ずんずん進んでいると、こんなものを見かけた。
博識な方ならご存知であろうか。
前日に見かけた菊である。嵯峨菊と勘違いしていたが、懸崖造りと言う盆栽の一種らしい。
色も形もそっくりである。何かの関係があるのかもしれない。
更に東進すると、八坂神社の西楼門が見えてきた。
八坂神社
かつては比叡山の別院であり、感神院祇園社と呼ばれていた。神仏分離などあり今に至る。祇園祭で有名。
昼間は混雑するこの神社も、早朝ではほぼ人はいない。地元の方らしき人々がちらほら参拝に来られるのみである。開門・閉門時間の無い神社はこの点が有難い。
徐々に日が昇り、東の空が白んできている。南楼門を出て南進し、二年坂の方へと向かう。
市内でもトップクラスに景観規制が厳しいだけあり、とても風情のある道だった。しばらく進むと八坂の塔が見える。
この日は妙にカラスが多かった。害にならない時は可愛く見える。勝手なことではあるが。
しばらく進むと猫も出てきた。しかも二匹。この通りで猫を見たことはなかったので、にわかにテンションが上がる。どうやら誰かが餌を置いているらしく、近づいても逃げない。かわいい。真上に餌やり禁止の張り紙があったが......
日が昇ってくるにつれ、通りもオレンジ色に染まってきた。
この景色を見たいがために早起きしている節がある。うまく写真に出来ないのがまことに残念である。もっとも、他の季節だと人外じみた早起きを要求される。冬至が近い季節だけの贅沢と言えるかもしれない。
ウキウキしながら進む。このような早朝、店は一つも開いていないが、修学旅行生も団体観光客も大学生もいない。普段なら自撮り棒が乱立する二年坂でさえ独り占めできる。
二年坂、産寧坂と転ばずに登り切った後、清水寺方向へ向かう。寺に近づくにつれて人が増えてくる。昼間だと外人さんも多く見かけるのだが、この時間には少ない気がする。時差ボケだろうか。
このような観光地であっても、町の掲示板らしきものがあった。地域少年ナントカなどの張り紙を見ると、ちゃんと人が暮らしていることを確認出来て少し安心する。寺に関する張り紙がその三倍はある辺り、普通の掲示板ではないが。
そうこうしているうちに清水寺に到着した。
知らない人は少ないだろう。なにせ世界遺産である。
征夷大将軍・坂上田村麻呂ゆかりの寺であり、改装は平安以前と相当な古寺である。文学作品や絵巻にもガンガン出てくる。
何よりも知られているのは本堂の舞台だろうか。願掛け飛び降り者が続出したことで有名である。もちろん現在は飛び降り禁止。そして改修中である。
清水寺の舞台より、朝日に照らされた京都市内を眺める。背後の東山から差す光が徐々に広がっていく様子は何とも美しい。あまりにも綺麗だったので、しばらく眺めていた。
舞台の反対側からも眺める。ある意味貴重な工事中の舞台である。紅葉はいささか見頃を過ぎているだろうか。この位置からだと光の角度の変化がよく見える。何度も往復しながら、朝の訪れを眺めていた。
この時間だと音羽の滝も空いている。ドリンクバーのごとく周回してがぶ飲みできるが、紳士的な量に留めた。
しばし堪能した後、境内の地主神社へ向かう。
・地主神社
全国的な地主神社は、大きな寺や神社が出来る前の土地の神様を祀った神社である。ここもそうかもしれない、らしい。
清水寺境内のこの神社では大国主命を祀っている。縁結びの神様として有名。
本来は9時に開門するはずなのだが、この時は7時半に開いていた。何故...?
有難く参拝させていただく。
本殿。重文である。
こちらの境内からの眺めも素晴らしい、末社にお参りした後、少し歩いてから鳥居をくぐる。鯉の池などを横目に見ながら寺を出た。
この時間になると、坂も活気に満ちてくる。支度中だろうか、開店前の店にもいくつか明かりが灯り、人の動く音が聞こえ、心なしかいい匂いもする。町が目覚める時間はどことなく楽しい。日は大分昇っており、行きとはまた違った景色である。足取り軽やかに清水道のバス停へと向かう。
少々遅れてしまったので朝食は飛ばした。九条車庫行きのバスに飛び乗って東山通を南下する。目指すのは京都でも一二を争う紅葉の名所、東福寺である。
その2へ続く。